研究課題/領域番号 |
25462614
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
西尾 浩 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (90445239)
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研究分担者 |
岩田 卓 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (30296652)
谷口 智憲 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (40424163)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 卵巣がん / 免疫抑制 / サイトカイン / NF-kB |
研究概要 |
HNF-1βを発現する明細胞腺癌(OCCC)株を用いてsh-RNAiによる特異的にHNF-1βの発現を抑制した細胞株を作成し,培養上清中の免疫抑制性サイトカインの産生が低下するかを網羅的にサイトカインの産生を測定できるBioplexシステムおよびELISA法を用いて検討した.controlの細胞株とsh-HNF-1β細胞株における培養上清中のサイトカイン産生の変化を調べたところ,control株で産生が亢進していた2種類の免疫抑制性サイトカインの産生がsh-HNF-1β株では抑制されることがBioplexの結果,判明した.2つのHNF-1β発現株においてHNF-1βの発現が抑制されていることを定量PCRにより確認し,培養上清中の免疫抑制性サイトカインの産生も抑制されていることがELISA法でも確認された.さらにHNF-1βを発現していないOCCC株においてレトロウィルスベクターを用いたHNF-1βの強制発現株を作成したところ,培養上清中の免疫抑制サイトカイン産生がcontrol株と比較して上昇した.このことから、HNF-1βはOCCCにおいて免疫抑制性サイトカインの産生に関与することが示唆された. 次にこれまでの報告でHNF-1βの下流には主として二つのpathwayが関与するとの報告があり,これらのpathwayがOCCC株でも活性化し免疫抑制性サイトカインの発現に関与しているかを検討した.先述のHNF-1β発現抑制株において二つの経路を担う分子の発現を定量PCRによって検討した.いずれの経路においても分子発現は抑制されていたため,これらの経路がOCCCにおいても活性化されサイトカイン産生に関与すると考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の計画として卵巣癌細胞株においてHNF-1βが関与する免疫調節分子の探索をテーマとして研究をすすめた.サイトカインを高産生する卵巣明細胞腺癌株を用いて,Bioplex法を用いた網羅的なサイトカインの検討を行った.またウィルスベクターを用いてHNF-1βの発現抑制もしくは強制発現株を作成し,HNF-1βが直接サイトカイン産生に関与するかの検討を行うことが可能であった.さらに具体的なpathwayの解析も主として発現抑制株および定量PCRを用いることで行うことが可能であったため,計画通りに研究が進行中であると認識している.
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今後の研究の推進方策 |
1.卵巣癌モデルマウスを用いた免疫抑制機序の解析と克服法の開発 申請者はこれまで卵巣癌細胞株をマウスに移植することにより、脾臓と腫瘍内に免疫抑制細胞であるMDSCや好中球が誘導されることが明らかとしてきた。これまでの検討でHNF-1βの発現を抑えるとin vitroでのIL-6の産生が著明に抑制されることから、in vivoではHNF-1βの発現抑制株を用いることでIL-6などの免疫抑制分子の産生が抑制され、MDSCなどの免疫抑制細胞の誘導が抑制することが可能であるかを解析する。 2.臨床検体を用いた免疫抑制性サイトカインやHNF-1βの発現と予後解析 当科での卵巣癌の手術件数は年間50件前後であり、血液・組織サンプルを含めた臨床検体を患者の同意のもとに得ることが可能である。具体的には①血清中のIL-6やIL-8など免疫抑制性サイトカイン濃度をBioplex®やELISA法により測定し、腫瘍組織中のHNF-1βやサイトカインの発現を免疫染色により解析する。②次に各因子と患者の予後(全生存率、無病生存率)との相関や担癌状態で血液中に誘導されるMDSCや好中球などの免疫抑制細胞の数と機能を解析する。 3.卵巣癌細胞株におけるNF-κBとHNF-1βの相互作用を解析 NF-κBとHNF-1βは直接もしくは何らかの細胞内因子を介して相互作用を有している可能性が高い。これらを分子レベルで確認するためにNF-κB阻害剤を用いた場合のHNF-1βの発現をウエスタンブロットやRT-PCRで検討する。一方で、HNF-1βの発現抑制を行った場合のNF-κBの活性化を検討する。またshRNAにより恒常的にHNF-1βの発現を抑えた細胞とコントロールの細胞でgene chipによる比較・解析を行い、NF-κBと関連する因子を同定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
予定していたマウスモデルの検証を平成26年度より始める予定としたため、実験動物の購入費用が減少したため。 今年度の消耗品を中心に使用予定である。
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