研究課題
本研究の目的は卵巣明細胞腺癌の原因や臨床的特徴に注目し、その関連物質から卵巣明細胞腺癌の診断・治療効果判定・予後予測・再発診断のバイオマーカーを同定することである。2000-2009年の卵巣明細胞腺癌症例のデータベース化と臨床病理学的予後因子を解析した。I期癌ではIC2/IC3期がIA/IC1期に比べ有意に予後不良であること、また、IA/IC1期ではoptimal staging categoryが独立予後因子となることを証明した。2010-2012年の卵巣明細胞腺癌症例のデータベース化とその解析からPT-INR、Fibrinogen、D-dimer、血小板数、ヘモグロビン、CRP、LDH、アルブミンが高率に異常値を示し、血小板数、ヘモグロビン、CRPが独立予後因子となることを見出した。2013年以降は比較対象とする卵巣漿液性腺癌や卵巣子宮内膜症性嚢胞症例と共に前方視的な症例集積を行い、同様にデータベース化を行ったが、予後因子の検証にはさらに観察期間を要する。2012年までの症例の手術検体パラフィンブロックより未染スライドを作成し、自動免疫染色装置ベンタナXTシステムベンチマーク、Roche Diagnostics)を用いてIL-6R、pStat3、BAF250aの免疫組織学的検討を行い、IL-6R高発現例は低発現例に比べ有意に予後不良であり、IL-6RはFIGO進行期、残存腫瘍径と共に独立予後因子であることを証明した。卵巣明細胞腺癌の発癌には炎症の関与が言われているが、現時点では血中CRP高値や免疫組織学的なIL-6R高発現が予後不良因子にもなることが示唆された。我々はさらにIL-6/STAT3シグナルに着目し研究を進め、卵巣明細胞腺癌細胞株でIL-6R si RNAや抗ヒトIL-6R抗体(tocilizumab)を用いたIL-6Rの抑制による抗腫瘍効果を明らかにした。
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Mol Carcinog
巻: 55 ページ: 832-841
10.1002/mc.22325