研究課題
原発性腹膜癌組織を用いた網羅的遺伝子解析により、特徴的な遺伝子群を同定した。バイオインフォマティクスによる検討の結果、RPL9、RPL10、RPL12、RPL19、RPL27A、RPL31、RPS3、RPS4X、RPS15A、RPS18、CCL5、が有意に高発現していることが判明した。これらcytoplasmic ribosomal protein群は、Ribosomal biogenesisやp53の制御に関与していることが知られており、CCL5は受容体CCR5に結合し、間葉系幹細胞およびcancer-associated fibroblasts (CAFs)を制御し、さらにp53の転写活性を調節することが知られている。原発性腹膜癌は従来からp53の病的変異を高頻度に認めることが指摘されていることを鑑みると、これらの分子が腹膜癌の病因病態に深く関与しており、治療における標的分子となり得ることが強く示唆された。さらに既存の多施設共同研究によるに臨床病理学的データを用いて、原発性腹膜癌139例の予後因子に関する研究を、新たに実施した。単変量解析では、骨盤外腹膜や横隔膜といった上腹部病変、術前化学療法(NAC)、初回手術の残存腫瘍径、後腹膜リンパ節廓清、がPFSに影響をおよぼし、全身状態(PS)、NAC、後腹膜リンパ節廓清、がOSに影響をおよぼすことが明らかとなった。さらに多変量解析の結果、PFSに関しては、NAC(HR 0.516)、初回手術時の残存腫瘍径(HR 0.472)が、独立した予後因子であり、OSに関しては、初回手術時の残存腫瘍径(HR 0.505)が、唯一の独立した予後因子であることが判明した。これらの結果は新たな知見であると同時に、原発性腹膜癌に対する治療指針として、NACが妥当であることと、徹底的な腫瘍減量手術が極めて重要であることを見出した。
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