研究実績の概要 |
卵巣癌培養細胞株においてBAF57 の発現を調べたところ、BAF57 の発現はcisplatin, doxorubicin,paclitaxel, 5-fluorouracil との感受性と強い陽性関係を示した。特異的なsiRNA を用いてBAF57 をノックダウンしたA2780 卵巣癌細胞株は、G1 で細胞増殖を停止した。このようにBAF57 阻害剤が新規抗がん剤としての可能性があることを2015年のcaner scienceに報告した。また研究代表者はp53 signature とエストロゲン受容体(ER)との関係に注目して研究を進めている。その中で、子宮内膜おけるp53 signature は漿液性上皮内癌に進展する際、ER の発現が消失することをVichows Archivesに報告した。さらに子宮内膜ポリープとp53 signatureの関係について検討しその発現は、患者年齢と強く関係していることを2016年のHsitolHistopatholに報告した。また高悪性漿液性卵巣がんにおいては、その多くがER 陽性であり、ER が患者予後不良のバイオマーカーになる可能性を報告している。SWI/SNF 複合体の構成蛋白であるBAF57 はエストロゲン受容体やアンドロゲン受容体の機能をコントロールしていることがすでに報告されており、今回の研究成果により、婦人科悪性腫瘍における腹水細胞または手術検体を応用した抗がん剤耐性機構の解明と新規薬剤の開発の題目で倫理員会承認を受け症例の登録を進めている。この研究により癌培養細胞のみでなく、生体からの癌細胞を用いてがんの組織発生の観点から、p53、ER, SWI/SNF 複合体構成する蛋白の役割を明確にし、さらに患者予後の新規のバイオマーカーを明らかにできるよう研究を発展させる予定である。
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