研究実績の概要 |
子宮頸癌発症にはヒトの遺伝的要因があることが疫学的に分かっていたが、それを担う具体的な感受性遺伝子は未発見であった(本研究開始時)。ゲノムワイド関連解析を行って、子宮頸癌感受性遺伝子を網羅的に同定し、さらにそれら遺伝子の機能解析を行うことにより、子宮頸癌の発症機序を解明するのが本研究の目的である。 前年度までに、子宮頸癌のゲノムワイド関連解析を行い、ゲノムワイド有意には達しないものの、有望な関連が複数発見できていた。 今年度は、共同研究機関の尽力により、罹患者1461名と健常者3295名で追加のタイピングを行った結果、ゲノムワイド有意な新規遺伝子座を2箇所同定できた。5q14遺伝子座においてはSNP rs59661306が最小のP値を示した。連鎖不平衡にあるSNPsはGPR98遺伝子のイントロンに位置していた。そのうちのSNP rs2973449は転写抑制因子FOXD3の結合に影響していた。クロマチンの3次元構造を調べたところ、ARRDC3のプロモータと接触していることが分かった。7p11遺伝子座においてはSNP rs7457728が最小のP値を示した。連鎖不平衡にあるSNPsの領域にはncRNA遺伝子HPVC1, LINC01445とタンパク遺伝子VSTM2Aが存在した。 上記の感受性遺伝子候補について、ヒトパピローマウイルス増殖の機能解析実験も行っている。 英国のUK Biobankについては、10万人についてゲノムデータを入手して関連解析を行ったが、2 SNPsは有意ではなかった。10万人に含まれる罹患者が少なかったからと考えられる。2017年夏には50万人のゲノムデータが公開される予定であり、それを入手して関連解析を行う予定である。 本研究は、子宮頸癌のゲノムワイド関連解析として、これまでで最大規模であり、2箇所の新規関連遺伝子座を同定できた。この発見は、子宮頸癌の発症機序解明・治療法開発を進めるための重要な一歩となる。
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