酸化と還元のバランスが崩れて、生体に活性酸素が蓄積する状態を酸化ストレスという。癌や感染症では、異物を攻撃するために白血球が集まり、活性酸素を放出することで殺菌したり、癌細胞を死滅させている。しかし、酸化と還元のバランスが崩れると、活性酸素が過剰に蓄積し正常な細胞も障害されてしまう。酸化ストレスが生じるメカニズムを細胞レベルと生体レベルで調べた。 内耳有毛細胞を用いてイノシトール3リン酸レセプターが刺激され、小胞体からカルシウムが大量放出されて細胞がアポトーシスに陥る現象を観察後、イノシトール3リン酸レセプターに結合するERp44タンパクの局在を免疫染色によって明らかにした。還元剤を培地に添加することでアポトーシスが抑制されたことから、ERp44とイノシトール3リン酸レセプターの結合が強まると予測された。 酸化ストレスが蓄積している生体モデルを作り出すことは困難で、癌患者の血清サンプルを用いて、血液中の酸化還元反応を測定した。dROMは活性酸素により酸化された血清中のヒドロペルオキシド濃度で、酸化ストレスの指標に、BAPは血清が還元した3価の鉄イオンを含む呈色液の濃度で、抗酸化力の指標とした。癌患者は非癌患者と比較してdROMが高値で、酸化ストレスに晒されていると判断した。
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