研究課題/領域番号 |
25462628
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
狩野 章太郎 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (00334376)
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研究分担者 |
伊藤 憲治 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター), 人工臓器・機器開発研究部門, 研究員 (80010106)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 聴覚 |
研究実績の概要 |
雑音下の日本語語音聴取の心理学的測定では、難聴の程度と聴取能との関連を解析した。高音部の感音難聴患者を1000Hzでの閾値で3群に分類すると、閾値が大きくなるにつれて67-S語表の多くの単音節の正答率が低くなった。1000Hzでの純音聴力検査の閾値を指標にすることで、語音聴取能が補聴器では十分には改善できないレベルかどうか、予測することがある程度可能であった。雑音が大きい場合に正答できる子音は健聴者と感音難聴者では違いがあり、感音難聴耳は限られた音響情報を使って健聴者と異なる戦略で子音弁別している可能性が示された。 日本語語音を用いた事象関連電位の測定システムを構築した。意味を伴わない単音節が継時的に変化する場合にこの変化を検出できているかを、聴覚皮質からの誘発電位を計測して検討した。難聴者で聴取が困難となる音声の特徴を抽出するために合成した音声を使用している。Envelopeを残してfine structureをwhite noiseで置き換えて合成したもの、また子音+母音の過渡音を段階的に変化させたもの、を作成した。 中枢聴覚路で両耳間時間差を検出する際に、両耳からの刺激に反応するbinaural cellが最大発火するための両耳間時間差と、音の周波数には非線形の関係があることを示した。音源が1つであっても壁での反射を含めると複数の伝達路が存在するが、これらの経路間の時間差についても中枢聴覚路では刺激音のfine structureを利用している可能性を示した。 In vivoの動物実験では刺激音の時間情報と記録した細胞外電位の時間情報を精密に比較できるシステムを完成させたのに加えて、マウスの聴覚皮質で音刺激に反応するニューロンを蛍光変化で弁別できるようになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
雑音下の日本語語音聴取の心理学的測定では、難聴の程度と聴取能との関連を解析した。 日本語語音を用いた事象関連電位の測定システムを構築した。難聴者で聴取が困難となる音声の特徴を抽出するための音声合成を継続中である。 In vivoの動物実験では刺激音の時間情報と記録した細胞外電位の時間情報を精密に比較できるシステムと、マウスの聴覚皮質で音刺激に反応するニューロンを蛍光変化で弁別できるシステムをテスト中であるが、実験設備の移転があったために進捗は遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
日本語の語音聴取課題では引き続き脳波・脳磁図での計測をbrush upする。難聴者で聴取が困難となる音声の特徴を抽出するために合成した音声を使用する。Envelopeを残してfine structureをwhite noiseで置き換えて合成したもの、また子音+母音の過渡音を段階的に変化させたもの、などを作成する。刺激音のtemporal fine structureを反映する脳波・脳磁図と中枢聴覚路の解剖学的部位との関連を解析する。 In vivoの動物実験では刺激音の時間情報と記録した細胞外電位の時間情報を精密に比較できるシステムをbrush upする。音に反応するニューロンの特性を短時間の計測で精確に比較できるように、Adaptive Tracking Methodによるチューニングカーブ計測を使用する。聴覚皮質や他の中枢聴覚路において、で音刺激に反応するニューロンを蛍光変化で弁別するシステムをbrush upする。特に、実験中に実験環境の背景雑音を精確に計測し、動物の可聴周波数帯域に合わせた正確な対照実験ができるようなシステムを構築する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験設備の移転があり、実験計画が遅れた。動物・電極・試薬等の消耗品の消費が予定より少なかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
動物・電極・試薬等の消耗品を次年度に継続して購入する予定である。
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