研究課題
内耳性難聴は症例数の多い疾患であるが、その病態は不明の点が多く、治療法もいまだ確立されていない。本研究では、臨床的研究として内耳性難聴症例でのレドックス制御、酸化ストレスの観点から、遺伝子多型や内耳MRI画像での内耳血管透過性亢進を中心とした所見を評価し、病態の分類や予後の検討をめざすものである。突発性難聴症例において、葉酸関連、一酸化窒素合成酵素(NOS3)、カベオリン、メラトニン受容体など7種類の遺伝子多型を調べ、コントロールと比較したところ、一酸化窒素合成酵素(NOS3)の多型(rs1799983)が疾患のリスク(オッズ比 2.1)と関連することがわかった。また突発性難聴の聴力の予後と各遺伝子多型のアレル頻度を比較したが、予後良好群と予後不良群でアレル頻度に差は認めなかった。内耳MRI(3D-FLAIR)では、造影前高信号は内耳液タンパク質濃度の上昇もしくは微量の内耳出血を、造影効果ありは内耳の血管透過性亢進・血液迷路関門破綻をそれぞれ示唆する。突発性難聴症例では、3D-FLAIR MRI造影前高信号ありの群と高信号なしの群で各遺伝子多型のアレル頻度を比較したが、両群間でアレル頻度に差は認めなかった。また造影効果ありの群と造影効果なしの群で同様に各遺伝子多型のアレル頻度を比較したが、両群間でアレル頻度に差は認めなかった。NOは血管内皮より産生され血管拡張に関連する。NOS3の遺伝子多型によりNOの産生が障害されると、赤血球の変形能に影響を与え血液の粘度が増す可能性がある。
2: おおむね順調に進展している
成果を学会発表および論文で公表できているため。
内耳性難聴症例において、さらにレドックス制御、酸化ストレスの観点から、病態の分類、病態別治療が行えるような炎症性サイトカインなどのマーカーの検索を行う。
今年度は内耳性難聴症例での一部の遺伝子多型の研究をおこない、それに関し次年度以降の予定であった成果発表まで行ったため、それ以外の予定の研究を施行できなかったため。内耳性難聴症例でのサイトカイン関連マーカーの検索や動物モデルでの内耳の形態的、生理学的実験を行う予定である。
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