研究課題/領域番号 |
25462639
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
北原 糺 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30343255)
|
研究分担者 |
今井 貴夫 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80570663)
太田 有美 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00598401)
森鼻 哲生 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80634170)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 耳鳴 / 侵害受容体 / 神経栄養因子 / サリチル酸 / 内耳障害 |
研究概要 |
サリチル酸のヒト投与での耳鳴の副作用はアスピリン耳鳴としてよく知られているが、その過剰投与で小動物にも耳鳴を引き起こすことが電気生理学的に証明されている。前回、サリチル酸耳鳴動物行動モデルを作成し、その耳鳴分子マーカーとして侵害受容体TRPV1が有用であることを報告した。今回、神経栄養因子であるBDNFのらせん神経節における発現動態を、生後4週の雄ラットを使用し、real-time PCR法を中心とした形態学的手法により検索した。 サリチル酸投与によってラットの耳鳴による反応行動が引き起こされ、投与2時間後にらせん神経節のTRPV1mRNAに引き続きBDNFmRNAの発現も有意に上昇した。さらにサリチル酸投与に先んじて、TRPV1拮抗剤、TRPV1アンチセンス、抗酸化剤、BDNFアンチセンスそれぞれを、浸透圧ミニポンプから正円窓経由で持続投与すると、TRPV1mRNAは4群すべてにおいて、BDNFmRNAは後2者のみで、サリチル酸投与2時間後の発現上昇は有意に抑制された。 以上のことから、サリチル酸投与による耳鳴の発生機序に、BDNFを介したTRPV1の転写調節が関与している可能性が示唆された。逆にTRPV1を抑制する薬物治療は、BDNFの転写調節に影響しない可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験室の整理により、耳鳴の動物行動学的な研究が頓挫することとなった。しかしながら、上記のごとく分子生物学的手法により、サリチル酸耳鳴の際にBDNFが活性化するとともにTRPV1を転写促進することがわかった。
|
今後の研究の推進方策 |
平成26年5月1日付で大阪大学医学部耳鼻咽喉科准教授から奈良県立医科大学耳鼻咽喉科教授として赴任することになった。そのため研究室の準備に相当期間を要する可能性がある。しかしその間を使って、研究実績の概要にも述べさせていただいた内容で海外論文、海外学会で発表していく予定である。 研究準備が整えば、分子生物学的アプローチにより、内耳障害を起こす他の誘因、音響外傷、アミノグリコシド内耳障害においても、らせん神経節細胞で同様の分子動態が確認できるかを確認する。また、内耳障害の時間経過とともに聴覚系末梢および中枢での分子動態の移行があるかを確認する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成26年度5月1日より研究主任である北原 糺が大阪大学医学部耳鼻咽喉科から奈良県立医科大学耳鼻咽喉科に異動。 そのため本研究の中心である耳鳴動物モデル実験装置の購入を控えたため。 新しい赴任先である奈良県立医科大学耳鼻咽喉科において、耳鳴動物モデル実験装置の購入を含めた研究再立ち上げに使用する予定である。
|