研究概要 |
小児先天性難聴に対しては、現在人工内耳埋め込み術が早期(1歳前後)から適応されることが多くなっている。しかし、人工内耳装用児のすべてが順調な言語発達を示すとは限らず、その言語発達には個人差が大きい。特に低年齢の人工内耳装用児でその言語発達予後を予測することは容易ではなく、より適切な手法の開発が望まれている。遺伝子診断は、従来難聴の原因を探すために主として用いられてきたが、近年では学習障害などの原因遺伝子も明らかにされており、この技術を用いて人工内耳術後の言語発達予後予測を行うことをこの研究の目標とした。当面、その予備実験として難聴のない言語発達障害児童(特異的言語発達障害)において、既に海外で報告されている言語発達に影響を与える遺伝子での変異の有無を検討した。末梢血から採取したDNAを用い、パラレルシークエンス法によって候補遺伝子(FOXP2,DYA1C1,DCDC2, KIAA0319, ROBO1)の全エクソンにおける変異を検討した。意味のある変異を検出することはできなかった。日本語話者での遺伝子変異は人種的ないしは言語的な違いにより、欧米での遺伝子変異とパターンが異なる可能性があり、まず本邦患者を元にした新たな言語発達障害関連遺伝子の解析が望まれると考えられた。
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