研究課題/領域番号 |
25462643
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
工田 昌也 広島大学, 大学病院, 講師 (00179590)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 内耳 / 老人性難聴 / めまい / アクアポリン / フリーラジカル / サーチュイン / バゾプレッシン / 治療 |
研究概要 |
本年度は研究計画に従い、基礎的検討として正常動物ですべてのアクアポリン(AQP0-12)の内耳での発現を検討した結果、血管条、内リンパ嚢、前庭暗細胞など水分輸送に関係する部位でAQP0-12の発現が認められ、内耳ではAQP0-12が水代謝に関与することが示唆された。さらに感覚細胞や、神経節細胞においてもAQPが出現しており、これらが内耳での感覚伝達に関与していると考えられた。また、sirtuinの内耳での発現を正常動物で検討した結果、内耳にはSIRT1-6のすべてが脳や他の臓器に比べて高率に発現しており、その局在も明らかにすることができ、機能としては主に内耳での細胞傷害の保護に働いていることが考えられた。今回、バゾプレッシン(VP)の慢性長期投与により内リンパ水腫モデル動物を作製し、VP投与が2ヶ月になると高度の内リンパ水腫が発現し、感覚細胞や神経節の障害を来たし不可逆的になることが明らかとなった。臨床的検討としては、老人性難聴の患者に、薬剤による治療を長期間にわたって行なった症例を集積するとともに、老人性平衡障害の治療効果についても検討するための症例の集積を始めた。本年度の基礎的検討の結果は今回、初めて得られた知見であり、加齢性内耳障害に対する治療を開発する上で重要であり、臨床的検討は今後の老人性難聴の予防に大きく役立つ。これらの結果は、第72回日本めまい平衡医学会、16th International Symposium on Inner Ear Medicine and Surgeryで発表されたと同時に、4編の論文にまとめられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理由)基礎的研究に関してはほぼ順調に推移し、sirtuin、AQPの内耳での局在を明らかにすることができ、新しい内リンパ水腫モデルの作成ができた。 臨床的検討に関しては老人性難聴や平衡障害の予防・治療に対する薬剤の有効性についての検討を開始した。
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今後の研究の推進方策 |
基礎的検討はほぼ予定通り進行した。今後は特に老齢マウスでの検討を追加し、具体的な治療法の検討が必要である。臨床的検討については主に老人性平衡障害の治療に関する検討を行う予定である。また、近赤外線分光法を用いて老人性難聴、平衡障害における大脳皮質での血流の変化の検討を行う。
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