研究課題/領域番号 |
25462647
|
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
福田 智美 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 講師 (40372776)
|
研究分担者 |
遠藤 大輔 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (90516288)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | エピゲノム因子 / 慢性炎症疾患 / 細胞増殖 |
研究概要 |
真珠腫性中耳炎は難治性の慢性疾患で、肥厚した重層扁平上皮を持った皮下肉芽腫を特徴とする。外科的切除術が唯一の根治療法であり、患者にとって手術後の合併症・後遺症が大きな負担になるため、保存的治療法の確立が望まれる。我々は以前の研究で角化細胞増殖因子(KGF)/受容体(KGFR)のパラクライン機構の中耳真珠腫形成への関与を見出し、KGF過剰発現による新奇真珠腫動物モデルの作成にも成功した。本研究ではこのKGF誘発真珠腫モデルを用いてin vivo でエピゲノム調節に関与する様々な酵素の阻害剤処理や関連遺伝子のノックダウンを行い、真珠腫性中耳炎に対するその治療効果を検証し、臨床応用の可能性を探ることを目的とした。 まず、手術時に採取した中耳真珠腫組織・正常皮膚を用い、解析を行なった。ヒストン修飾動態に関しては特にヒストンH3 のLys9、Lys14、Lys18、Lys23、Lys27 のアセチル化及びLys4 及びLys27 のメチル化に注目しながら、細胞増殖活性についてはKi-67抗原抗体用い、KGF及びKGFRの発現については我々で以前開発した抗体(Yamamoto-Fukuda T 他 (2003) Lab Invest 83)を用い、免疫組織化学的に解析した。特に、KGF及びKGF受容体の転写活性については各ヒストンアセチル化抗体と抗KGF、KGFR抗体の二重染色により解析を行なった。 動物モデル解析では、エレクトロポレーション法でSDラットの外耳道皮膚にKGFプラスミド導入し、KGF遺伝子で誘導されるエピゲノム因子の経時的変化と上皮細胞増殖活性との関係を解析した。ヒストン修飾動態に関しては特にヒストンH3 のLys9、Lys14、Lys18、Lys23、Lys27 のアセチル化及びLys4 及びLys27 のメチル化に注目しながら、細胞増殖活性についてはKi-67抗原抗体を用い、免疫組織化学的解析をした。 現在、ヒト組織での結果とラットモデルでの結果の比較を行っている段階である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト組織での解析と疾患動物モデルでの解析が終了しており、今後は阻害薬投与実験に移れる準備がおおむねできている。
|
今後の研究の推進方策 |
エピゲノム阻害剤投与実験を行う。 ヒストン蛋白修飾の人為操作として、HDAC 阻害剤SAHA 或いはtrichostatin A (TSA)投与やヒストンメチル基転移酵素の阻害剤ホモシスチン投与及びshRNA によるノックダウンなどによるエピゲノムの人為的操作をin vivo で行い、真珠腫発症抑制の効果の検討および至適条件(投与薬剤、投与時期、投与量、投与回数)の確定を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
当初の予定よりも進展があったため、平成26年度中に実施を予定した投与・ノックダウンvivo実験の一部を平成25年度中に実施することにより、真珠腫発症抑制のための至適条件の確定が見込まれるため。 実験動物、パラフィン標本作成用試薬、ベクター増幅用試薬、抗体等試薬、免疫染色用試薬スライド・チップ等、実験用消耗品(手袋、ガウン等)、実験用薬品(麻酔、消毒)エレクトロポレーション用プローブ換え針などの消耗品の購入費及び、研究成果発表のための旅費交通費、論文投稿費に使用する予定である。
|