研究課題/領域番号 |
25462652
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
岡本 康秀 慶應義塾大学, 医学部, 客員講師 (10317224)
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研究分担者 |
入野 俊夫 和歌山大学, システム工学部, 教授 (20346331)
神崎 晶 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (50286556)
貫野 彩子 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (20445331)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 時間分解能 / 感音難聴 / TMTF / Gap検査 / 周波数選択性 / 劣化音声 |
研究概要 |
音声中の時間的変化はエンベロープ(Envelope)と時間微細構造(TFS: Temporal Fine Structure)によって捕らえられる。このうちエンベロープが語音の聞き取りに強く関与していることが予想される。横軸にtime(時間)、縦軸にamplitude(振幅)を用いて音声の時間的経過を示すことで、音声のエンベロープ情報が示すことが出来る。そこで、この音声の変化を上限周波数15Hz(現音声にほぼ近い音声)から1Hz(劣化の強い音声)で劣化音声を段階的(1,3,5,7,10,15Hz上限周波数制限)に作成した。この作成した劣化音声を、健常者(20歳代)に対して劣化音声語音明瞭度として測定した。その結果、上限周波数が5Hz以下の劣化音声において、語音聴取は50%以下に悪化する結果であった。また、母音正答率はよく保たれ、平均約95%の聞き取りが出来ていた。以上より、時間分解能の劣化音声において、語音聴取の劣化は主に子音の聞き取りの劣化によるところが大きいことがわかった。このことは母音の認識にはフォルマントのF1,2の周波数情報が重要で、時間分解能劣化音声では劣化を加えても母音としての特性は失われず、母音の正答率は維持されたと考えられる。一方、子音成分は中~高音域にフォルマントが存在するために時間劣化が著しく、子音の認識がしにくくなっていることが原因と考えられ、時間分解能劣化では子音の聞き取りが悪化するために語音の低下を来すことが分かった。エンベロープ情報としては、この子音の不明瞭化が一つの理由として考えらさらに、子音から母音への渡りの部位においても明瞭性が失われることから、実際の感音難聴者においてはっきりと聞きとりやすい音声を検討するためには、エンベロープを強調する音声処理が逆に必要であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回実績として述べた実験結果は、本年度の予定していた内容通りに遂行できている。 同時に、来年度からの研究計画にもあるように、時間分解能の測定を難聴者に対して開始している。具体的には、時間分解能の測定方法としてGap検知閾値検査、TMTF測定の2種類の測定法をプログラムし測定を開始している。合わせて、TMTF測定は簡易法も検討しており実際測定を開始し始めている。
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今後の研究の推進方策 |
今回の研究実績を踏まえ、難聴者における時間分解能劣化の測定機器の開発を推し進めることを検討する。現在まで時間分解能を検出する検査としてGap検知閾値検査などが使われ報告されてきたが、測定する方法、例えば提示音の違いや音圧の違いなどで結果のばらつきが大きく、特に語音明瞭度との結果との相関が認められないため測定結果が病態を反映しないため臨床では使用できないでいる。そこで今回は、難聴者に対して新たに時間分解能を検出する検査として、TMTF測定として変調周波数を用いて評価する検査機器の開発を試みる。合わせて臨床応用できるように簡易法も合わせて開発を行っていく。具体的には4-512Hzのオクターブ8変調周波数(128Hz以上が正常範囲)を用いてさらに変調度を-40-0dBとし、聞き取れる閾値を測定することで時間分解能劣化を測定する。簡易法は測定点を8変調周波数から2周波数に減らした上で、近似式にて従来法の結果に近似させる方法を検討したいと考えている。これらの結果が、本年度の劣化音声との関連性についても考察を行っていく予定である。さらに最終年に向けて、時間分解能劣化音声から得られた語音明瞭度の悪化と、時間分解能測定機器から得られる結果から、時間分解能の劣化している感音難聴者に対してのエンハンス技術を構築していければと思っている。
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次年度の研究費の使用計画 |
効果的な物品調達を行ったため。 難聴者に対してGap検知閾値検査、TMTFを施行するに当たり、検査プログラムの改訂と利便性を考慮した開発に用いる予定である。また、論文発表に当たり情報収集と論文掲載費を考えている。学会発表も昨年に引き続き行うために使用する予定である。
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