研究課題
遺伝性難聴は約1,600出生に1人の高頻度に発症する疾患であり、聴覚と言語発育の著しい障害を引き起こす極めて高度なQOLの低下をもたらす。これまでの研究により30以上の原因遺伝子が同定されたが、最終的には100以上の難聴遺伝子の関与が推察されている。遺伝性難聴の根本的治療法は皆無であり、新たな治療戦略を必要としている。本研究ではウイルスベクターによる内耳遺伝子導入法を独自の遺伝性難聴モデルに適用する。主に標的とするのは蝸牛線維細胞・支持細胞および同細胞で機能するコネキシン(CX)26遺伝子(GJB2)である。GJB2は遺伝性難聴において世界で最も高頻度に変異が検出される難聴原因遺伝子として知られている。この治療による聴力回復に関する有効性と安全性を評価する。本研究では、CX26欠損による聴覚障害を修復する治療法として欠失した遺伝子の導入を我々の作製した遺伝性難聴モデルマウスへ適用し安全性・有効性評価を行うことにより、これまで皆無であった遺伝性難聴の根本的治療法を開発することを目的とした。これまでの研究では、新生仔マウス(生後0日齢)へのCX26遺伝子を搭載したアデノ随伴ウイルス(AAV)の投与によりCX26欠損マウスの蝸牛組織にCX26遺伝子を発現させ、コルチ器の形態異常およびラセン神経節細胞の変性を保護することが確認された。聴性脳幹反応(ABR)による聴力解析ではAAV投与側の内耳が対側の内耳よりも3割程度の有意な聴力改善が示された。これは遺伝性難聴の臨床応用が期待できる重要な成果として英国遺伝学雑誌に掲載された(Hum Mol Genet, 2015)。我々はより低侵襲のウィルスベクター投与法の佳発を目指し、半規管からのウィルス液還流法と正円窓からの濃縮液注入法の比較検討を行った。半規管還流法では大量の液体を液循環により投与できることから蝸牛全体への遺伝子導入に有効であった。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件)
Human molecular genetics
巻: 24 ページ: 3651-3661
10.1093/hmg/ddv109.
J Otol Rhinol
巻: S1 ページ: 37-40
10.4172/2324-8785.S1-009