研究課題/領域番号 |
25462658
|
研究機関 | 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター) |
研究代表者 |
加我 君孝 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター), 臨床研究センター(政策医療企画研究部), 名誉臨床研究センター長 (80082238)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 人工内耳 / 補聴器 / 方向感検査 / 両耳時間差 / 両耳音圧差 / バイオーラル / バイモダル / 両耳分離能 |
研究概要 |
両側の重度の難聴者では聴覚の感覚遮断状態にあり、人工内耳手術を受けると中枢聴覚伝導路が初めて機能する。しかし、両耳聴も脳の可塑性により機能回復がどこまで実現するかわかっていない。両耳聴効果には両耳合成能と両耳分離能および音源定位があるが、人工聴覚ではその能力が獲得されるのかまだわかっておらず、両耳聴の脳の可塑性は不明である。 ①単音節・単語・文章の認知能力について調べた。セカンド・インプラントはいずれもマッピング間もなくファースト・インプラントと同じレベルの認知能力を示すことがわかった。 ②人工内耳と補聴器装用の方向感を研究した。すなわちリオン社製の方向感検査装置を用いて、人工内耳と補聴器のバイモダルおよびバイオーラル装用の各場合について、方向感と2つの側面の時間差と音圧差のどちらか、あるいは両方とも成立するか調べ、両耳聴の可塑性を調べた。いずれも音圧差は成立するが時間差は成立しないことがわかった。③両耳分離能を調べた。両耳人工内耳症例2例を調べることが出来た。その結果は両耳分離能力が実現していることがわかった。人工内耳と補聴器のバイモダルあるいはバイオーラル装用下に両耳分離能と両耳融合能が成立するか今後研究する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究はおおむね順調に進んでいる。両耳人工内耳手術症例がこの1年余り、小児も成人も増加しつつあることがまず挙げられる。従来両耳聴検査はヘッドフォンを用いて行っていたが、本研究の初年度から人工内耳も補聴器もTコイルを用いて、音刺激はTコイルに対して誘導コイルで伝達する技術開発を行った。その結果ヘッドフォン法よりも正確な検査が出来るようになった。 平成25年度の計画の、①単音節・単語・文章の認知能力は、両耳人工内耳手術のセカンド・インプラントではファースト・インプラントの時よりも著しく短い期間に認知出来ることが判明した。これはファースト・インプラントで聴覚伝導路の同側も反対側も聴覚機能を回復することを示している。②方向感検査で時間差と音圧差に分けて調べた。その結果、a.片側人工内耳・反対側補聴器のバイモダルでも、b.両側人工内耳のバイオーラル装用でも音圧差は成立するが時間差は成立しないことがわかった。③両耳分離能検査は両側人工内耳装用者2例に対して行うことが出来た。2例とも正答数は50%以下であるが、分離して聴くことが出来ることが判明した。これは脳の中で統合され左右別々に聴いていることを示している。④光トポグラフィによる脳機能検査は補聴器装用児に対して研究を開始したところである。 初年度の研究で、時間差が成立するには末梢の中耳・内耳が機能していることが必須であることが示唆された。人工内耳は音情報は中耳・内耳を経ずにいきなり蝸牛神経に電気刺激で伝えられるために時間差が成立しないと思われる。
|
今後の研究の推進方策 |
今のところ両耳人工内耳装用者が増加しているので、本研究は今後大きく進む見込みである。両耳聴検査に人工内耳および補聴器のTコイル機能を用いて両耳への音刺激を誘導コイルで伝達する方法を世界で初めて導入した。それにより正確な両耳聴検査が可能となり、大きな進歩である。今後取り組むべきことに、①両耳合成能検査の作成と②方向感検査に誘導コイルによる伝達方式を取り入れ、より正確な検査を行うこと、③片側および両側先天性小耳症・外耳道閉鎖症例の術後補聴器装用下に方向感の成立の有無、両耳分離能検査による脳における統合と分離能力について取り組む計画である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本研究では両耳聴検査のための誘導コイルの作成、両耳分離能検査の作成、臨床検査技師への謝金などが研究の推進に必要な見込みである。 誘導コイルの作成、両耳分離能検査の作成のための消耗品購入、検査を担当する臨床検査技師への謝金などに使用する予定である。
|