研究課題
好酸球性副鼻腔炎は鼻粘膜への著しい好酸球の浸潤を特徴とした難治性の疾患で、ここ10数年でわが国をはじめ世界規模で増加傾向にある疾患である。本疾患の治療はいかに鼻粘膜の過度な浮腫をコントロールできるかにかかっている。我々は、これまでに好酸球性副鼻腔炎の鼻粘膜上皮に肥満細胞の浸潤が増加し、それらのプロテアーゼの発現パターンがこれまでの分類に当てはまらないユニークな型である事を明らかにした。気道上皮はアレルギー炎症の形成に大きく関与するため鼻粘膜上皮に浸潤しフェノタイプを変化させた肥満細胞がどのように本疾患に関与しているのかを検討した。気道上皮が産生するサイトカインでアレルギー炎症に関与する可能性があるIL-33, TSLP, IL-25の肥満細胞への影響を観察するためにヒト末梢血幹細胞から分化させて作成した肥満細胞を作成した。この検討によって気道上皮が産生するサイトカインが培養肥満細胞におけるプロテアーゼの発現パターンを変化させることが分かった。さらに刺激によって変化した肥満細胞のフェノタイプは好酸球性副鼻腔炎で鼻粘膜上皮に浸潤している肥満細胞と同様にTryptase(+),CPA3(+), Chymase(-)であった。Chymaseは炎症性サイトカインの分解や組織の線維化を誘導する働きがあり炎症の収束に重要なプロテアーゼである。気道上皮の刺激によってフェノタイプを変化させた肥満細胞は本疾患における炎症の遷延化に関与することが示唆された。これらの上皮系サイトカインによる肥満細胞への影響についてさらに検討を行った。その結果、組織の修復の際に形成されフィブリン網の分解を行う線溶系を制御するPAI-Iの発現が著しく増加することを明らかにした。また手術で摘出した鼻粘膜においてもPAI-1の発現が増加しており、この経路が生体内で起こっている可能性が高い。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件、 オープンアクセス 8件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件)
Immun Inflamm Dis
巻: 3 ページ: 300-308
10.1002/iid3.69
Sci Rep
巻: 21 ページ: 12360
10.1038/srep12360
Am J Respir Crit Care Med
巻: 192 ページ: 682-694
10.1164/rccm.201412-2278OC
Allergy
巻: 70 ページ: 995-1003
10.1111/all.12644
Am J Rhinol Allergy
巻: 29 ページ: 94-99
10.2500/ajra.2015.29.4135
J Control Release
巻: 28 ページ: 52-59
10.1016/j.jconrel.2014.12.040
Allergy Asthma Immunol Res
巻: 52 ページ: 421-430
10.4168/aair.2015.7.5.421
Am J Respir Cell Mol Biol
巻: 52 ページ: 88-95
10.1165/rcmb.2013-0399OC