研究概要 |
齧歯類には4種類の嗅覚器、すなわちGrueneberganglion・鋤鼻器(Vomeronasal organ:VNO)・Septal organ・主嗅上皮(Main olfactory epithelium: MOE)が存在していることが知られている。しかし、マウスにおいて嗅覚器の嗅神経細胞数を正確に計測した研究はなかった。 マウス主嗅上皮に存在する嗅神経細胞の総数を明らかにすべく、雌雄のC57BL/6Jマウスの成獣(8週齢)の頭蓋骨を鼻腔を含めて採取し、脱灰したのち、100マイクロメートル間隔で10マイクロメートル厚の切片を作成した。切片は成熟し機能している嗅神経細胞に特異的に発現しているOlfactory Marker Protein (OMP)に対する抗体を用いた免疫組織化学法による染色を行った。その後、マウス嗅覚器の中で最も大きい主嗅上皮に存在する嗅神経細胞をStereologyの手法を用いて計測した。 その結果、成獣(8週齢)のC57BL/6Jマウスの1側主嗅上皮におけるOMP陽性嗅神経細胞の総数は雄では5,140,000±380,000個、雌では5,210,000±380,000個であることが明らかとなった。また8週齢のC57BL/6Jマウスの主嗅上皮に存在するOMP陽性嗅神経細胞の数は統計学的に性差は認められなかった。 これらの結果、マウスの一側主嗅上皮におけるOMP陽性嗅神経細胞の総数が約5,000,000個であることを初めて明らかとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は各種実験動物(齧歯類)の標本作成を主として行っており、ラットにおいては新生児(P0)、4週齢、8週齢、12週齢、6か月齢、1年、2年の標本作成を行った。これらの標本は抗OMP抗体を用いた免疫組織化学法による染色を実施しており、現在Stereologyの手法を用いた計測が進められている。 また、今まで遺伝子解析によく用いられていたにもかかわらず主嗅上皮に存在する嗅神経細胞総数の報告がなかったマウス(C57BL/6J)においては8週齢における標本を作製し、主嗅上皮内のOMP陽性嗅神経細胞数の計測をStereologyの手法を用いて行った。その結果、マウスの一側主嗅上皮におけるOMP陽性嗅神経細胞の総数は性差なく、約5,000,000個であることを初めて明らかとすることができた。
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