研究課題/領域番号 |
25462665
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
竹野 幸夫 広島大学, 医歯薬保健学研究院, 准教授 (50243556)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 一酸化窒素(NO) / 呼気中NO濃度(FeNO) / サイトカイン / NO合成酵素(NOS) / アレルギー性鼻炎 / 副鼻腔炎 / 好酸球 / 前頭陥凹 |
研究概要 |
鼻副鼻腔における局所一酸化窒素(NO)測定を新たな客観的診断パラメータとするという目的に対して、、1)鼻呼気FeNOと局所NO測定方法の確立と妥当性の検証、2)鼻副鼻腔におけるNO合成酵素並びに関連代謝酵素と酸化代謝産物発現の分子生物学的解析、ヒト鼻副鼻腔各洞におけるNO産生能の相違とサイトカイン・成長因子発現の関連性、などの研究を行なった。 固有鼻腔から直接定量的にサンプルを吸引し局所NO(nasal NO)を測定する手技の確立を試みた。この手法により下気道など他の要因の影響を受けにくく、かつアレルギー炎症の主座である下鼻甲介表面と、副鼻腔自然孔が開口する鼻腔側壁の個々人における解剖学的特徴を加味した解析が可能となった。 NOの産生・代謝の観点から我が国における好酸球性副鼻腔炎(ECRS)と化膿性副鼻腔炎(non-ECRS)の相違が存在するかどうかの検討では、ECRS症例ではoral FeNOの有意な上昇、non-ECRS症例ではnasal FeNOの有意な低下が確認された。組織学的検討でもECRS症例では好酸球を主体とする浸潤炎症細胞にiNOS 局在と発現亢進を認め、さらにはNO代謝産物で酸化ストレス障害のマーカーであるnitrotyrosineの沈着も顕著であった。従ってECRSにおけるNO産生と代謝機構はnon-ECRSのそれと異なっており、これらを背景としたFeNOのモニタリングは本疾患の診断と治療評価を行う上で有用な指標となる可能性が示された。 また難治性副鼻腔炎における前頭洞から前頭陥凹粘膜における病態を解析した。その結果、ECRS症例では好酸球関連サイトカインとNO関連酵素の発現に特徴を認めた。手術的な前頭洞の換気排泄路の拡大と同時に、NO濃度の変動を指標とした術後の薬物療法の有用性も高いことを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト鼻副鼻腔の解剖学的特徴をふまえたNO濃度の測定法の確立に成功した。この測定には吸引嘴管と医療用シリコンチューブを接続し、流速50mL/secに設定した定量吸引ポンプをNO測定機器に接続して用いた。こうして得られた値が、従来のFeNO値を基にした各種ガイドラインの記載と矛盾しないものであり、新たな有用知見が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、上気道における一酸化窒素(NO)の産生・代謝機構に注目して、アレルギー性鼻炎と副鼻腔炎病態においてNO濃度を基にした客観的検査法の臨床応用を目指す。そして本パラメータを用いた臨床的な薬物療法と手術療法の有効性の検証。自覚症状並びに他覚所見の改善度(鼻症状スコア、内視鏡所見スコアなど)との相関性について解析を試みる。また好酸球性中耳炎症例においても、中耳腔ならびに気道のNO濃度を測定する試みを準備する。 基礎的研究として、鼻副鼻腔粘膜の培養細胞を用いたNO産生機構の分子生物学的解析も併せて行う予定である。また気道におけるNO産生機構を調節する新たな関連酵素として注目されているADMA、誘導型arginase、などの物質にも焦点をあててヒト鼻副鼻腔における局在と機能的役割について研究する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
H25年度に実施する予定であった培養細胞を用いた研究などとデータ解析の一部を、H26年度に行う予定としたため。 培養細胞を用いたNO産生機構の分子生物学的解析、並びにNO産生機構を調節する新たな関連酵素として注目されているADMA、誘導型arginase、などの物質の局在と機能的役割について研究する計画である。
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