研究実績の概要 |
【目的】好酸球性副鼻腔炎(ECRS)は難治性の副鼻腔炎であり、特徴として鼻副鼻腔粘膜に著明な好酸球浸潤を認めるが、その病態に関しては不明な点が多い。近年、新たなリンパ球集団として自然リンパ球 (ILCs)が同定され、ILC1、ILC2、ILC3のグループに分類されている。なかでもILC2 は強力な好酸球性炎症を誘導することが報告されていることから、今回我々は鼻副鼻腔内のILC2が慢性副鼻腔炎における好酸球性炎症を誘導し、好酸球性/非好酸球性炎症の病態を決定すると仮説し、鼻茸(鼻粘膜)、末梢血内のILC2の発現と分布、鼻茸内のサイトカイン環境に関する検討を行った。 【方法】当院で手術した好酸球性副鼻腔炎、非好酸球性副鼻腔炎(NECRS)、正常コントロール(下垂体腺腫)の患者を対象とした。まず、末梢血単核細胞と鼻茸を採取し、フローサイトメトリーを用いて鼻茸内、末梢血中のILC2数を病態別に検討した。次に鼻茸内のサイトカインを測定し、鼻茸内のILC2数との相関を調べた。さらに鼻茸内のILC2に対し、サイトカイン(IL-2, IL-33)で刺激をして、IL-5, IL-13, IFNgの産生能を病態別に比較検討した。鼻茸(鼻粘膜)内におけるILC2の分布を調べるため、蛍光免疫染色を行った。 【結果】鼻茸内のILC2はECRSにおいてNECRSと比べ有意に細胞数が増加しており、鼻茸内のILC2数は鼻茸内のEDN(好酸球炎症)と強い相関を示した。鼻茸内より分離したILC2は、IL-2/IL-33両存在下でIL-5, IL-13の産生を認め、非刺激、IL-2/IL-33単独刺激と比較して有意に高値を示した。免疫染色においてILC2はECRSで観察された。 【結論】ILC2はECRSにおいて鼻茸内で増殖し、IL-5/IL-13を産生することにより好酸球炎症を惹起している可能性が示唆された。
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