研究課題
嗅神経画像解析方法の検討ではタリウム-201経鼻投与とSPECT-MRI融合画像によるオルファクトシンチグラフィの臨床試験を嗅覚障害者に対し施行した。鼻副鼻腔炎、感冒、外傷性など一般的原因の嗅覚障害に加えて原因不明の嗅覚障害者の多くでもタリウム-201嗅神経移行度の低下が明らかとなった。その結果嗅神経再生を促すリハビリテーション法の確立の重要性が改めて明らかとなった。リハビリテーション法の具体的方法について検討した結果次のように臨床試験を実施することに決定し倫理委員会の承認を得て試験を行った。二つの嗅覚刺激法(A法:鼻腔からの刺激法;B法:口腔からの刺激法)のいずれかを無作為に選択し、被験者に自宅で実施してもらった。一日3回の食事毎にA法では食物を鼻腔に近づけ良く香りを嗅いでから口に入れて、B法では食物を口に入れて10回程度咀嚼し食物の香りを良く味わいながら食事をする。両者の方法の選択は封筒法により無作為に選択しまた原因疾患ごとに2群均等な症例数になるよう割り振った。1ヶ月に1回程度来院してもらい言語聴覚士により咀嚼嚥下訓練を行なった。また毎日の食事の際に指導を受けたとおりの食事法を実践したか日誌に記録をつけてもらった。咀嚼嚥下訓練の際の食物の選択でカレー風味など嗅覚障害者でもにおいがわかりやすいトウモロコシスナック菓子の使用が効果的であることが明らかとなった。新たな嗅神経トレーサーの開発に関してマウス鼻腔へIGF-1を投与し大脳内のIGF-1シグナルへの影響を検討したところNa+-K+ ATPase阻害薬によりIGF-1の経鼻的脳内輸送が阻害され、軸索輸送阻害薬(コルヒチン)の影響は受けないことが明らかとなった。以上よりIGF-1は経鼻的脳内輸送において嗅神経内ではなく神経外側を通過するが、嗅神経の活動亢進に伴うIGF-1の血液脳関門通過の促進効果によることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
嗅覚障害のリハビリテーションの具体的方法について検討を重ね、効果的な方法を考案し倫理委員会の承認を得て臨床試験を開始することができた。また従来から行なっているタリウムー201使用のオルファクトシンチグラフィの臨床試験も順調に推移し新たな研究結果を得る事ができた。さらにIGF-1が更なる嗅神経トレーサーへ発展の可能性が示唆される基礎実験の成果が得られた。
食べ方の指導による嗅覚障害リハビリテーション法の無作為比較試験をさらに継続し、タリウム-201オルファクトシンチグラフィでリハビリテーションによる治療効果を検討してゆく予定である。またIGF-1に人体に使用可能な放射性アイソトープを付加して嗅神経の画像解析を行なう基礎実験も計画している。また動物の嗅覚行動を効率良くモニタリングするシステムの構築も目指している。
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