研究課題
当院で治療した唾液腺癌症例の臨床検体を用いて免疫組織染色法により標的分子の発現を解析した。その結果、EGFRは全体の76%、HER2は20%、c-KITは38%で陽性であった。組織型別ではEGFRは粘表皮癌、腺様嚢胞癌、扁平上皮癌で多く認められ、HER2は唾液腺導管癌、c-KITは腺様嚢胞癌で特に多く認めた。また、生存率との解析を行ったところ、EGFR陽性例では5年粗生存率76.6%、陰性例では56.0%であった(有意差なし)。HER2陽性例では5年粗生存率33.3%、陰性例では83.3%であった(p<0.01)。c-KIT陽性例では5年粗生存率88.9%、陰性例では60.1%であった(有意差なし)。この結果からHER2分子が予後不良因子と考えられたため、さらに詳細な検討を行ったところ、HER2陽性症例は有意に高齢者に多く(p=0.024)、Tステージの進行例が多く見られた(P=0.026)。また、粗生存率に関して、年齢、性別、T因子、N因子、神経周囲浸潤、HER2を用いた多変量解析を行ったところ、N因子、神経周囲浸潤、HER2が独立した予後因子であった。さらに免疫染色法でHER2陽性であった18症例に関して、FISH法によりHER2遺伝子増幅を検討したところ、9例(50%)で遺伝子増幅を認めた。免疫染色との相関を検討したところ、免疫染色で2+の症例では全例遺伝子増幅を認めなかったのに対し、3+の症例では82%の症例で遺伝子増幅を認めた。粗生存率に関しては、HER2遺伝子増幅なしでは5年粗生存率57.1%、増幅ありでは0%であった(p=0.419)。
2: おおむね順調に進展している
研究計画の予定通り、唾液腺癌の発現分子の解析、および病理組織型や臨床像との関連を明らかにできた。
当初の予定通り、唾液腺癌細胞株の樹立を目指す。また、予後不良因子であるHER2の下流シグナルの解析や、遺伝子変異なども検討していく。さらに、基礎的な知見を基に、臨床試験の実施を目指していく。
研究計画は順調であったが、研究に必要な物品などにおいて予定より経費が生じなかった。次年度では、細胞培養実験や遺伝子変異解析など予定しているため、次年度使用額及び翌年度請求助成金を使用する計画である。
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Oncology
巻: 84 ページ: 290-298
10.1159/000346908.