研究課題
東北大学において過去に治療を行った症例(中咽頭癌、乳頭腫の癌化例を含む鼻副鼻腔癌など)を対象に、パラフィン検体を用いてp16免疫染色、high risk型HPV in situ hybridization、更にDNA抽出からのPCR、direct sequencing法等を用いて、各症例のHPV感染statusを明らかにした。特記すべき点として、本邦でも以前から鼻副鼻腔乳頭腫および癌はHPVの研究対象とされてきたが、HPVが細胞に感染した状態を示すepisomal typeと、癌化に特異的と考えられる宿主ゲノムへのウイルスDNAの組込みを伴うintegrated typeが明確に区別されている報告は少なく、主にPCRベースのこれまでの報告で、本邦の癌におけるHPVの関与は12.5-15.7%(Furuta1992,Mineta1998)とされてきた。しかし、今回、integrated typeにターゲットを絞り検討した結果、その関与率は著しく低かった。一方で過去の報告同様にPCRのみではlow risk、high risk型共にepisomal typeと理解される偽陽性を認め、さらにp16免疫染色のみでも偽陽性があるとする報告(Bishop2013)同様に、本邦の症例においても偽陽性があることを確認した。本邦におけるHPV関連頭頸部癌研究の更なる発展に際しては、HPVの検出法の十分な理解と浸透が不可欠と考えた。なお、内反性乳頭腫の癌化症例においてもHPVの関与を認めなかった。確認したHPV感染statusを元に、中咽頭癌パラフィン検体からマイクロRNAを抽出し、定量PCRによるhouse keeping gene発現と電気泳動法によるsmall RNAパターン確認の上で、マイクロRNAマイクロアレイを行った。プロファイリング解析結果を踏まえ、確認実験を予定している。
2: おおむね順調に進展している
当初予定していた研究計画に概ね沿った順調な進展であるが、マイクロRNAマイクロアレイの結果解析を、一部、平成26年度に跨って行う方針である。また、中咽頭癌の年代別症例を対象としたHPV感染率評価については、可能な範囲で症例抽出を行ったが、今後、さらに追加抽出が可能なより古い症例があれば随時追加実験を予定している。
最近、HPV関連頭頸部癌においては、複数のマイクロRNAが同時に発現変化することで、発癌機序に関与している可能性が報告(Lajer 2012)されてきている。そのため、当初から予定しているHPVの感染有無ならびにタイプ別の他、HPVに関連する分子マーカーなどにも注目したsubgroup別のマイクロアレイ結果解析による候補マイクロRNAの抽出も検討する。
今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額の他、当初計画していた年代の古い検体を対象とするHPV感染評価や、マイクロRNAマイクロアレイの結果解析が、一部、次年度に跨ることに伴い生じたものである。次年度に跨って行う実験に用いる他、平成26年度請求額とあわせ、当初計画した平成26度の研究遂行に使用する予定である。
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