研究課題/領域番号 |
25462676
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
吉川 直子 千葉大学, 医学部附属病院, 医員 (50400924)
|
研究分担者 |
関 直彦 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50345013)
花澤 豊行 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90272327)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 下咽頭癌 / マイクロRNA |
研究概要 |
下咽頭癌は初診時に進行癌の割合が高く、治療後の遠隔転移症例も多い為、未だ予後が不良である。下咽頭癌の治療成績の向上の為には、遠隔転移の制御が重要な課題であると考える。しかしながら、下咽頭癌の遠隔転移に関わる分子メカニズムは、依然として不明な点が多く、新規診断法や治療法の開発に向けてさらなる研究が必要である。 ヒトゲノム解析研究の成果として、ヒトゲノム中には、今まで想像もしなかった機能性RNA分子(蛋白をコードしないRNA分子)が数多く存在する事が明らかとなった。その中で、マイクロRNAと定義される低分子核酸(19~22塩基)は、蛋白コード遺伝子の分解や翻訳阻害を通して遺伝子発現をコントロールしている。また、1種類のマイクロRNAは、数十~数千の蛋白コード遺伝子の発現制御を行う事から、ゲノム中に存在する蛋白コード遺伝子の半数以上がマイクロRNAのコントロール下にある事が示唆されている。そのため、マイクロRNAの発現異常は細胞内のRNAネットワークの破綻を誘発して、様々な疾患の原因になる事が報告されている。 申請者は、下咽頭癌臨床検体からマイクロRNA発現プロファイルを作成し、癌細胞において発現低下しているマイクロRNA(癌抑制型マイクロRNA候補)を多数見出している。本研究では、microRNA-504に着目し、その機能解析と標的遺伝子の探索を行った。その結果、microRNA-504は、細胞周期に関与する癌抑制型マイクロRNAである事が判明した。さらに、細胞周期を促進するCDK6を標的遺伝子として制御する事を見出した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
独自に作成した下咽頭癌マイクロRNA発現プロファイルから、microRNA-504を選択し、その機能解析から、microRNA-504が下咽頭癌・癌抑制型マイクロRNAである事を証明し論文発表した。これまでの報告では、microRNA-504は、癌促進型マイクロRNAである事が報告されていた。今回の報告により、下咽頭癌において、microRNA-504の癌抑制機能が新たに証明された。さらに、microRNA-504がコントロールする遺伝子としてCDK6を見出した。CDK6は、細胞周期を促進する遺伝子であり、癌細胞において過剰発現する事が報告されている。下咽頭癌臨床検体で発現を確認した結果、CDK6の発現上昇を確認した。この事から、癌抑制型microRNA-504の発現低下により、癌遺伝子機能を有するCDK6が過剰発現する分子機構の一端が明らかとなった。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果として、下咽頭癌における「癌転移抑制型マイクロRNA」として、microRNA-504を見出し、in vitroの解析において、その癌抑制機能を証明してきた。本年度の目標は、microRNA-504のin vivoにおける解析を施行し、動物モデルにおける癌抑制機能を証明する事である。In vivo解析の準備として、下咽頭癌由来癌細胞株(FaDu)に蛍光蛋白GFPを組み込んだ安定発現細胞株を作成した。この細胞株にmicroRNA-504を遺伝子導入し、FaDu-GFP-microRNA-504細胞株の樹立を行う。この細胞をマウス皮下に移植し、癌抑制能についてin vivo解析を行う予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
端数の為 端数と次年度を合わせて使用予定
|