研究課題
近年、ヒトゲノム中には、蛋白をコードしない機能性RNAが多数存在し、転写されている事が判明した。その中で、マイクロRNAに分類されるRNA分子は、蛋白コード遺伝子の発現を負に制御する事から注目されている。1種のマイクロRNAは、数十から数百種類の蛋白コード遺伝子の発現を制御しており、ゲノム中の遺伝子の半数は、マイクロRNAの制御を受けている。したがって、マイクロRNAの発現異常は細胞内の分子ネットワークの破綻を誘発し、ヒト癌を含む疾患の発症や進展に関与する。本研究目的は、下咽頭癌「癌抑制型マイクロRNA」の探索と、下咽頭癌で活性化されている分子経路を探索する事である。本研究では、下咽頭癌で発現低下していた31種のマイクロRNAの中で、下咽頭癌細胞株FaDuの増殖を最も強く抑制していたmiR-504に注目して解析を行った。miR-504を核酸導入すると、他の頭頸部癌細胞株(SAS、HSC3)においても増殖の抑制が認められた。また、BrdUを用いたFACSの解析から、miR-504はFaDuにおいてG1アレストを誘導する事が明らかとなった。更に、miR-504の標的分子候補として、細胞周期に関わる遺伝子群(RB1、CDK6、CDC23およびCCND1)が明らかとなった。下咽頭癌臨床検体23例でこれらの遺伝子の発現を定量PCRで測定すると、CDK6は癌部で有意に発現が上昇し、かつmiR-504の発現と負の相関を持つ事が明らかとなった。CDK6のタンパクレベルでの発現はmiR-504の導入により抑制される事がWestern blotから明らかになった。以上の結果から、下咽頭癌において、miR-504はCDK6を制御する下咽頭癌・癌抑制型マイクロRNAとして機能する事が明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
下咽頭癌における癌抑制型miR-504と細胞周期に関与する標的遺伝子CDK6に関して、さらに詳細な解析を行い、下咽頭癌臨床検体におけるmiR-504とCDK6の負の相関関係、miR-504によるCDK6のタンパクレベルでの発現抑制が明らかになった。
今後の目標は、miR-504のIn vivo解析を施行し、動物モデルにおける癌抑制機能を証明する事である。
端数の為
端数と次年度を合わせて使用予定
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件)
Br J Cancer
巻: 112 ページ: 891-900
10.1038/bjc.2015.19.
巻: 111 ページ: 386-94
10.1038/bjc.2014.293.