研究課題/領域番号 |
25462684
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
折田 頼尚 岡山大学, 大学病院, 助教 (90362970)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 腫瘍関連マクロファージ / 舌癌 / COX-2 / 抑制性T細胞 |
研究実績の概要 |
本来抗原提示などによって癌を抑制するはずの腫瘍関連マクロファージ(M1-tumor associated macrophage (M1-TAM))が、何らかのきっかけで腫瘍促進性のM2-TAMに表現型を変える機序については不明な点が多い。マクロファージが最初から全て癌促進的に働くとは考えにくく、少なくとも前癌病変の段階では抑制的に働くM1マクロファージが主と予想している。そこで、癌発生・進行過程におけるTAMの出現パターンを動物モデルを用いて観察することにした。 野性型マウスに4-nitroquinoline-1-oxide (4NQO)を投与することにより舌癌が発生することが知られている。我々はパイロットスタディとしてまず数匹のマウスに4NQOを投与し、舌癌ができることを確認した。大体10週間投与を継続すると前癌病変が発生することをHE染色で確認し、本格的に群分けし数を揃えて改めて舌癌モデルマウスの飼育を開始した。その後、大体15-20週目以後癌化が始まることが判明した。4NQOのみ与える群、4NQOと同時に投与量の異なる2通りのCOX-2選択的阻害剤並行投与群を設けている。今のところ肉眼的、或いはHE染色上では4NQO単独投与群とCOX-2選択的阻害剤並行投与群の間に癌の発生・進行状況に大きな差異は認めていない。マウスの苦痛も考慮し、15・20・25・30週でマウスを屠殺し、舌癌の進行状況を観察するとともに、病理組織標本の作製および舌からRNA抽出を行っている。現在63例からRNA抽出を行ったが、うまく抽出できない症例もあり進行中である。また、免疫染色も施行しているが、きれいな発色を得るのに苦戦し抗体のメーカー等を変更するなど試行錯誤中である。また、今のところ当初予想していたマクロファージの腫瘍内への浸潤があまり見られず、抑制性T細胞の方がよく観察されることがわかってきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
この舌癌マウスモデルは、1クールに30週間(約7.5か月)を要し、更にこの実験を始めるにあたってのパイロットスタディを行うのに10週間要した。また、当初可能な限り少ない数のマウスで実験を遂行しようとしたが、不慮の病死やマウス同士の争いが元と思われる死亡が散見され、1クール終了時点で当初予定していた検体数より不足となった。更に、予定通りRNAが抽出できない(技術的問題あるいはマウス個体の問題)症例があり時間を要した。現在、ほぼRNA抽出作業は完了し、何も与えていない所謂コントロールマウスの標本を作成中である。また、順次パラフィン包埋して取りためたホルマリン固定標本も免疫染色しているが、当初予想した通りにはなかなか染まらず、条件設定等に苦戦している状態である。また、前述のとおり舌癌発生・進行過程であまりマクロファージそのものが同定されず、リンパ球と関連するサイトカインの上昇を認め、検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
RT-PCRはほぼ目標症例数に達したため、その結果をふまえて免疫染色の対象を絞り込む。また、当初の研究ターゲットであった腫瘍関連マクロファージがあまり認められないかわりに、抑制性T細胞に関連する他事象で興味深い結果もみられるため、そちら方面での解析も進める予定である。
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