研究実績の概要 |
舌癌動物モデルにおけるtumor associated macrophage(TAM)の浸潤とCOX-2阻害薬投与の影響をみる実験を計画した。この動物モデルは発がん物質4NQOの投与開始から最低30週を要する実験であるため、その間ヒト舌癌組織を用いた研究を並行して行った。マウスの実験の途中結果で、このモデルでは殆どTAMの浸潤が見られないことが判明してきた。動物実験とヒト舌癌組織を用いた実験結果を呼応させるため、我々はまずヒト舌癌組織における抑制性T細胞(Treg)の浸潤を観察した。ヒト舌癌組織34検体を用い、CD4/Foxp3、CD8/Foxp3の各免疫2重染色を行い、陽性細胞数をカウントした。そして初期舌癌においては、癌nest部への高度のTreg浸潤が予後不良因子であることが判明した(Hanakawa H, Orita Y, et al. Acta Otolaryngol 2014; 134: 859-64)。続いて、舌癌においてまだ原発は小さいにもかかわらず頸部転移を起こす要因として、high mobility group box1(HMGB1)の発現を免疫染色を用いて26例のヒト舌癌組織を検討したが、HMGB1の発現強度は舌癌の頸部転移予測因子とはなりえないことが判明した(Hanakawa H, Orita Y, et al. J Laryngol Otol 2014; 128: 926-31)。舌癌マウスモデルにおいては、RT-PCR、免疫染色法を用いて検討した結果、舌癌発生初期にTreg、IL-10が多く、癌の進行とともに減少すること、またTGF-βは逆に癌発生初期に少なく進行とともに徐々に増加する傾向にあることがわかった。COX-2阻害剤は癌の進行等に大きな影響を与えなかったがTregが癌浸潤部に集積するのを抑制する傾向が見られた。舌癌の治療・予防においては、癌発生初期にTregを抑制することが重要なのではないかと予想された(論文投稿中)。
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