研究課題/領域番号 |
25462686
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
藤 賢史 九州大学, 大学病院, 講師 (20380397)
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研究分担者 |
中島 寅彦 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00284505)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 上皮細胞増殖因子受容体 / 内在化 / 脂質 |
研究概要 |
上皮細胞増殖因子(EGF)受容体EGFRは、種々の癌腫で発現がみられ、その活性化が、発がん、増殖、浸潤、転移といった癌の進展に深く関わっている。これまでの研究により、天然に存在する化合物が上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)の内在化を誘導し、細胞外からの増殖因子に対する反応を阻害する可能性が示された。このメカニズムを誘導することは、EGFRとその下流シグナルの活性化を回避することにつながる可能性を示唆する。その機序としてsrcの活性化が重要であり、この活性化にはN末端のアシル化が関係している可能性があることが代表研究者らの研究により示された。 本年度の研究では、細胞膜の脂質構造の変化がEGFRの内在化や下流のシグナル伝達を制御するとの仮説に基づき、EGFRが高発現している頭頸部癌について、細胞膜脂質構造とEGFRの内在化のメカニズムの関係、及びこの現象が治療戦略上ターゲットとなるか否かを検討した。EGCGのようなポリフェノール類、コレステロールを用いて検討した。DiC16染色、及びその可溶性アッセイ系を用いた。 結果、ポリフェノール類に含まれる化合物(EGCG, curcumin)では、細胞膜のDiC16染色パターンを変化させていた。これはSrc、及びSrcファミリー蛋白の局在を変化させる可能性を示唆している。 さらに候補となる物質が細胞増殖、遊走能に及ぼす影響の評価を行った。細胞株として、頭頸部がん細胞であるYCU-H891細胞を用いた。ポリフェノール類に含まれる化合物はMTTアッセイで細胞増殖を抑制する効果を認めた。wound healing アッセイで遊走能の変化を評価したが、EGCGやcurcuminは有意な遊走の変化は認めなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
DiC16染色やボイデンチェンバー法による測定形が当初十分に機能せず、設定に時間を要したことが影響し、スクリーニングが十分に行えなかったが、膜脂質への影響や増殖能、遊走能に関する一定の評価を行った。
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今後の研究の推進方策 |
EGFRを活性化させる刺激により、多くの細胞株は増殖能と同時に遊走能が更新する。従来から提唱されている上皮間葉転換が生じるものと思われる。YCH-H891細胞株でも、顕微鏡観察下では、比較的短時間の内に細胞接着性が低下し、細胞形態が変化することが観察される。25年度の実験では、遊走能に関して抑制効果がなかったが、実験系そのものに問題がある可能性があるので、26年度は遊走能に関する評価を追加する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験計画がわずかに遅れたことと、すでに保有していた抗体や試薬が使用できたために物品費がが予定より少額となったことと、学会での発表機会が予定より少なかったため、旅費が少額となったことが原因である 25年度に施行できなかった細胞膜脂質構造に変化を与える物質のスクリーニングを進めると共に、遊走能に関する実験を推進する。これらの実験に必要な物品(試薬類、抗体、蛍光観察用の特殊ディッシュ)の購入が必要で、前年度の予算から使用する。また、海外での学会発表も行う予定としており、前年度予算から使用する必要があると予想している。
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