研究課題/領域番号 |
25462689
|
研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
黒野 祐一 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (80153427)
|
研究分担者 |
宮下 圭一 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 助教 (30585063)
川畠 雅樹 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 助教 (30585112)
牧瀬 高穂 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (30585120)
永野 広海 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (60613148)
間世田 佳子 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 医員 (70535666)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | ホスホリルコリン / 粘膜免疫 / 経鼻免疫 / 舌下免疫 / 経皮免疫 |
研究実績の概要 |
1)ホスホリルコリン(PC)配合体による粘膜免疫応答の誘導:PC配合体を単独で経鼻そして舌下投与したところ、わずかなIgA応答はみられたが、生体防御に十分な免疫応答は誘導されなかった。そこで、①PC-KLH複合体、そして②コレラトキシンをアジュバントとして併用し、経粘膜投与したところ、PC特異的なIgA応答ならびに全身的なIgG応答を誘導することができた。すなわち、PCはいかなる配合体を作成してもハプテンとしてしか作用しないことが示唆された。
2)PC粘膜免疫応答の比較:PC-KLHの経鼻投与と舌下投与では、IgAおよびIgG応答に大きな差はみられなかった。しかし、ヘルパーT細胞の反応性を比較すると、舌下では経鼻と比較してTh1型の反応が強く、Th2型の反応は差がみられなかった。また、それを支持するように、舌下投与ではIgEの産生が経鼻よりも優位に少なかった。したがって、舌下のほうがⅠ型アレルギー反応やアナフィラキシーを起こしにくいと考えられる。
3)経皮免疫応答:PC-KLHをマウス背部皮膚に塗布し、その免疫応答を観察したところ、全身免疫応答は誘導されたが、IgA粘膜免疫応答はほとんど誘導されなかった。しかし、マウスの耳介に塗布したところ、鼻汁や唾液中のIgA応答が認められた。すなわち、耳介経皮免疫が上気道粘膜免疫応答の誘導のためのルートとして有効なことが示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1)予備実験ではPC配合体単独でも免疫応答を誘導できると推測されたが、その反応はわずかであり、今後の感染予防やアレルギー反応の抑制を検討するには十分ではないと考えられる。そこで、コレラトキシンやPC-KLHを用いた実験に変更したが、ヒトへの応用を考えたとき、ヒトにも使用できる他のアジュバントや複合体を開発し、その効果を観察する必要がある。 2)現在PC-KLHを購入し実験に用いているが、米国のこの試薬の取扱業者が交代し、その入手が困難になり、実験に支障をきたしている。 3)高血圧症の予防効果を検討するためモデルマウスを飼育しているが、思うように繁殖せず、その検討がまだなされていない。
|
今後の研究の推進方策 |
1)PC-KLH経鼻投与によるアレルギー性鼻炎の抑制効果についてはほぼ実験を終了しているため、次に舌下投与による効果を検討する。 2)高血圧症予防に関する動物実験が困難な場合は、ヒト血清中のPC特異的免疫グロブリン値を測定し、PCの関与についてその証左を得るように計画する。 3)IgA腎症についてもモデルマウスの作成が困難であれば、IgA腎症患者の口蓋扁桃リンパ球のPC特異的免疫応答を観察し、PC粘膜ワクチンによる予防効果を検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
動脈硬化モデルマウスの繁殖が思うようにいかず、高血圧症の予防効果を検討するための実験が計画通りに進められなかったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
モデルマウスの繁殖がうまくいけば、高血圧症の予防効果を検討するための実験に使用する計画である。もし、動物実験が困難な場合は、ヒト血清中のPC特異的免疫グロブリン値を測定し、PCの関与について検討するための実験に使用する計画である。
|