研究課題
1) Flt-4発現頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)細胞に対するFlt-4刺激および阻害において,細胞選択的にCNTN-1,VEGF-C自身の発現変化が認められることに加えて細胞増殖能・遊走能いずれも亢進/抑制が認められ,VEGF-Cにparacrine作用のみならず癌細胞自身に対するautocrine作用も存在することが示唆された。HNSCC組織標本55例を用いて癌細胞自身のFlt-4, VEGF-C, CNTN-1の発現を免疫組織化学的に評価し臨床病理学的因子に関する相関を検討した結果,単変量解析で各々の発現はいずれも頸部LN転移との間に有意に相関し,多変量解析の結果Flt-4陽性が頸部LN転移の独立規定因子であった。2) 舌扁平上皮癌細胞株におけるside population (SP)分画は0.9~10.2%に認められ,癌幹細胞関連遺伝子発現を検討した結果,SP細胞では転写因子Oct3/4,Nanogの発現がnon SP細胞に比べ顕著に高かった。また細胞遊走能および浸潤能はSP細胞のほうが高いのに対し,増殖能には差を認めなかった。初回治療として舌部分切除を行ったstage I/II舌癌症例組織標本を用いて後発頸部リンパ節転移(DNM)との相関を検討した結果,単変量解析ではOct3/4, Nanogの発現はともに有意に相関し,多変量解析の結果DNMの独立相関因子はOct3/4発現と静脈侵襲であった。3) 頭頸部腺様嚢胞癌30症例の臨床統計学的検討において, 5年/10年疾患特異的生存率(CSS)は73.9%/62.4%,5年/10年非担癌生存率(DFS)は64.3%/59.7%で,多変量解析の結果独立予後因子はDSSでは神経周囲浸潤,DFSでは切除断端であった。長期的には高い遠隔転移率が認められることから,外科的切除単独による成績向上には限界があると考えられた。
3: やや遅れている
研究代表者自身に異動がありかつ連携研究者の異動も伴ったために,実験研究の環境整備に相応の時間を費やしたこと,およびスケジュール調整に大幅な制約が生じたこと,HNSCC細胞への遺伝子導入において効率が不十分かつ導入細胞自体のselectionに難渋するとともに,実験の一部で至適条件設定に試行錯誤を重ねていること,組織標本を用いた検討において臨床統計に必要な経過観察期間の延長を要したこと,病理組織学的項目の再評価にも予測以上の期間を要したこと,などが要因となり,当初の計画に比べて遅延が生じている。
なお平成27年4月研究代表者自身に異動があり所属が杏林大学医学部から再度慶應義塾大学医学部に移動したため,実験研究の環境再整備とスケジュール再調整を効率よく進める必要がある。現実的にはある程度の遅延は不可避と考えられるが,その状況に合わせて研究計画内容を適宜修正しながら進めてゆく。HNSCC細胞へのFlt-4-dominant negative (Flt-4-dn)導入による安定発現株の樹立が依然として困難であることから,in vivo modelに確立にはこだわらない方針とし,引き続き in vitroレベルでの表現型の変化の評価を優先して検討を進めてゆく。組織標本を用いた検討においては,経過観察期間を短縮して暫定的な検討を行い,また評価項目を必要不可欠以外のものに関しては一部除外することも考慮する。
研究代表者の異動に伴い実験研究の推進に遅延が生じたため,予定していた参加学会への出張経費について他の研究資金を充当することができたため,および引き続き効率的な物品調達を行うことができたため。
次年度の研究費と合わせて,必要な消耗品購入・謝金・学会参加出張費・研究成果発表費(論文出版費)などに充当する予定である。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件) 備考 (2件)
J Exp Clin Cancer Res
巻: 33 ページ: 40
10.1186/1756-9966-33-40
日本耳鼻咽喉科学会会報
巻: 117 ページ: 658-665
http://www.keio-ent.jp/kenkyu_04.html
http://www.kyorin-u.ac.jp/univ/faculty/medicine/education/staff/detail/?id=med33022