研究課題/領域番号 |
25462700
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター) |
研究代表者 |
徳丸 裕 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター), 平衡覚障害研究室, 研究員 (60245579)
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研究分担者 |
藤井 正人 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター), 聴覚平衡覚障害研究室, 部長 (70129633)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ヒト乳頭腫ウイルス / 頭頸部癌 / メチル化 |
研究概要 |
ヒト乳頭腫ウイルス(human papillomavirus: HPV)は、子宮頸癌や頭頸部癌などの発癌に関与している。特に欧米では若年層の性活動の活発化、多様化により、HPV関連の頭頸部癌が著明な増加傾向を示している。本邦においても、欧米の流れを追従しHPV関連の頭頸部癌が増加すると予想され、HPV感染の持つ意味合いはますます重要になってくると考えられる。一方、HPV陽性頭頸部癌は非喫煙者、非飲酒者に多く、従来の頭頸部癌とは異なる臨床像を呈している。つまりHPVによる独自の発癌メカニズムが働いていることが示唆される。本研究では、これまでの頭頸部癌とは生物学的に異なった腫瘍であるHPV陽性頭頸部癌を対象に、エピジェネティックな検討することによって、その発癌メカニズムを解明することを目的としている。 当科にて加療した頭頸部扁平上皮癌症例70例を対象にヒト乳頭腫ウイルス(HPV)の検出を行った。対象症例の原発部位別では下咽頭27例、喉頭18例、中咽頭16例、口腔9例である。性別は男性62例、女性8例で、年齢の中央値は63歳であった。病期分類ではステージIIが6例(8%)、ステージIIIが10例(14%)、ステージIVが54例(74%)と進行癌が大部分を占めた。手術もしくは生検にて採取された検体は、速やかに-80度で保存し、その後DNAを抽出した。HPVの検出とタイピングはPCR Human Papillomavirus Detection SetおよびPCR Human Papillomavirus Typing Set(共にタカラバイオ株式会社)を用いた。 対象症例71例中、8例(11%)にHPVの感染を認め、いずれも中咽頭癌であった。中咽頭癌のみでは16例中8例(50%)にHPVが検出された。HPVのタイピングの結果はタイプ16が7例、タイプ33が1例であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サンプル収集についても順調に進んでおり、またHPV検出の手技についてもすでに我々が実験に用いている方法であるので、特に問題なかった。一部のDNAサンプルにおいて、解析結果が不明確なものがあったが、再実験により問題ないことが確認された。
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今後の研究の推進方策 |
今後は対象症例のサンプル数を増やすと同時に、DNAメチル化の解析を行う。抽出したDNAはBisulfite処理を行った後、メチル化の有無をPCR (methylation specific PCR、MSP)で検出する。臨床検体の解析ではリアルタイムPCRをもちいたQuantitative MSP(QMSP)にて遺伝子のメチル化の有無、程度を測定する。申請者らはこれまでもQMSPも臨床サンプルに用い、その有用性を報告してきたが、本法はメチル化の定量的な解析が可能になるだけでなく、感度、特異度の高い解析が可能である。結果は、TNMステージ、病期などの臨床情報との関連を検討し、さらにHPV感染の有無との関連を解析する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
サンプルからのDNA抽出およびHPVの検出が想定以上に順調に進んだため、再実験が少なかった。解析不可能な場合には外注検査に提出することも検討していたが、そのようなケースがなかった。また実験助手に対する謝金や解析用のコンピュータの購入も予定していたが、他のラボとの協力が可能であったため、本研究費からの支払いがなかったため。 次年度についてはメチル化の解析を行う予定であるが、解析が十分に行われないことも予想され、再実験や外注検査に使用される可能性がある。また実験助手に対する謝金や解析用コンピュータの購入にも使用する予定である。
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