研究課題
頭頸部癌においてHPVの感染やTP53遺伝子変異は重要な働きをしていると考えられる。今回我々は、中・下咽頭癌、喉頭癌についてHPVおよびTP53遺伝子の解析を行い、予後との関連を検討した。対象は当科にて化学放射線療法を施行した病期Ⅲ、Ⅳの中・下咽頭、喉頭扁平上皮癌67例(下咽頭癌31例、中咽頭癌20例、喉頭癌16例)である。ハイリスクHPVの検出はPCR法にて、またTP53変異の検出はDirect sequencing法を用いて行った。ハイリスクHPVは11例(16.4%)で検出され、すべて中咽頭癌であった。またp53の遺伝子変異は41例(61.2%)に認められ、部位別では下咽頭癌で21例(67.7%)、中咽頭癌で8例(40.0%)、喉頭癌で12例(75.0%)に認められた。予後との関連では、HPV陽性群、TP53 wild type群、TP53 mutant群の順で良好であった。頭頸部癌においてHPV感染およびTP53の変異といったgeneticな変化は重要な予後規定因子になりうると考えられ、将来の個別化治療に役立つ可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
サンプルの収集は順調であり、また実験手技についても、特に問題は生じていない。
今後は、以下の点を明らかにする予定である。1 HPV陽性頭頸部癌における網羅的なエピジェネティック解析を行う。2 新たに同定されたHPV感染の程度と治療の効果予測や予後との関連を調べることにより、臨床応用の可能性を検討する。
サンプルからのDNA抽出およびHPVの検出が順調に進んだため、再実験などが少なかった。また解析不能の場合には、外注検査も想定していたが、実際にはそのようなケースは少なかった。
今後は、メチル化の解析などさらに実験が複雑になると想定され、試薬の購入や再実験に費用がかかると考えられる。また外注検査も状況により、適宜用いていく予定である。
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Oncology
巻: 87 ページ: 173-182