家兎に薬剤溶出ハニカムフィルムを使用した緑内障濾過手術を行った。26年度の研究により、容量0.5μgのパクリタキセル溶出ハニカムフィルムが、無血管性濾過胞のの形成を予防しつつ、瘢痕化の少ない濾過胞の形成維持に有用である可能性が示唆されたので、パクリタキセル(PTX)の容量は0.5μgとした。そこで以下の2群(各n=8眼)に円蓋部基底線維柱帯切除術(強膜弁は無縫合)を行った。PTX群ではハニカムフィルムのハニカム面をテノン嚢側に向け強膜弁上に配置し、マイトマイシンC(MMC)群では0.04%MMCを強膜弁作成後に2分間留置し、その後洗浄した。術前、術後12週間の眼圧測定と超音波生体顕微鏡による濾過胞評価を行い、組織標本を作成した。【結果】12週目にPTX群の3眼で濾過胞が消失したが、濾過胞生存に有意差はなかった(p=0.063)。術後8週以降はMMC群の眼圧がPTX群よりも有意に低く、術後12週のPTX群、MMC群の眼圧は13.4±3.6、9.0±4.2 mmHgであった。MMC眼では全例で広範囲に無血管性濾過胞を形成(28.5±13.2mm2:術後12週)し、組織学的に結膜上皮の部分的欠損を認めた。PTX眼では無血管性濾過胞は形成されなかった。【結論】低用量PTX含有ハニカムフィルムは長期においても濾過胞瘢痕化抑制及び有血管濾過胞形成に有用であった。MMCと比較し有血管性濾過胞形成には著明な効果を示したが、長期的にはMMCより濾過胞が瘢痕化する傾向にあった。
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