研究課題
昨年度までNewZealnad White(NZW)種のロドプシンP347LTgウサギ(Tgウサギ)を用いて、網膜変性進行した状態における網膜色素上皮の機能及び形態を検討した。NZW種のTgウサギでは網膜電図が生後36か月では全て消失していた。リン酸緩衝液を網膜下に注入し網膜剥離を作成し、網膜下液の吸収を検討したところ、視細胞がほぼ変性したTgウサギと野生型ウサギの検討では、両者とも網膜下液は24時間で消失しており、両群に差はみられなかった。今年度は、有色家兎であるDutch種を用いて実験を行った。眼底所見は、アルビノであるNZW種とは異なりDutch種では茶色の背景をしていた。WTタイプとTgでは血管走行にやや違いはみられたが、網膜色素変性患者のような色素沈着はみられなかった。Dutch種のTgウサギ4匹の検討では、網膜電図が36か月でも残存しており、NZW種のものよりも長期に視細胞が残存していることが示唆された。また、前年度までの実験と同様に網膜剥離を人工的に作成しその吸収過程を検討したが、NZW種と同様に網膜下液は24時間以内に吸収され、野生型と差はなかった。今年度の結果からは、ダッチ種のTgウサギは視細胞の変性がややNZW種より遅いことと、網膜色素上皮の色素の有無にかかわらず視細胞変性後でも網膜色素上皮のポンプ機能はほぼ正常であることが分かった。申請者は当初、Tgウサギの網膜と色素上皮のポンプ機能が減弱していることを予想していたが、今回の結果からは網膜変性が進行しても網膜色素上皮の形態及びポンプ機能は保たれていることがわかった。網膜色素変性に対する遺伝子治療において、網膜下にベクターなどを注入する治療が試みられているが、今回の結果は視細胞変性後、早期では色素上皮のポンプ機能は保たれ、網膜下に注入されたベクターを色素上皮に取り込まれる可能性を示唆していた。
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Invest Ophthalmol Vis Sci
巻: 57 ページ: 1264-1269
10.1167/iovs.15-17708.
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