研究課題/領域番号 |
25462711
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
上山 久雄 滋賀医科大学, 医学部, 准教授 (30127013)
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研究分担者 |
村木 早苗 滋賀医科大学, 医学部, 講師 (90335175)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 錐体 / オプシン / 先天色覚異常 / 光学密度 / プロモーター / エキソンスキッピング / ナンセンス変異 |
研究概要 |
1型色覚(L錐体が機能していない先天色覚異常)では、視物質遺伝子アレーが正常の並び(先頭がL遺伝子で後続がM遺伝子)である3例を見出した。1例は女性であり、両L遺伝子の異常を明らかにするべく、発現ベクターに遺伝子全長をクローニングして解析しているところである。残る2例(男性)では、L遺伝子のプロモーターの塩基置換とナンセンス変異をそれぞれで見出した。前者は網膜で発現している遺伝子のプロモーターに共通したシスエレメントにおける塩基置換であった。転写活性への影響の有無を見るため、プロモーター領域をレポータープラスミドにクローニングして解析しているところである。また、正常の並びではないが、M-Mアレーを持つ1型色覚において、3色覚98例中、先頭のM遺伝子と後続のM遺伝子の違いがエキソン2だけである35例を見出した。エキソン2がコードするアミノ酸配列はM視物質の極大吸収波長のシフトを起こさないので、この35例は2色覚のはずである。われわれはL型のエキソン2が当該視物質の発現量の低下を引き起こすことを明らかにし、これが3色覚の原因であろうと推定した(光学密度が異なる2種のM錐体が生じると考えれば説明できる)。特殊なハプロタイプのエキソン3を持つ先天色覚異常では、スプライシング時にエキソン3がスキップされてしまうことをわれわれは既に見出していた。本研究の目的の1つは、エキソンスキッピングを回避する方法を探すことであるが、検索を容易にするため、GFPベクターにcDNAをクローニングし、そのエキソン2~4の領域を、特殊なハプロタイプのエキソン3を持つ遺伝子領域と置き換えたものを作成した。スプライシングにおいてエキソン3が残ればGFPの蛍光が検出できる系である。これまで20種類以上の化合物やオリゴ核酸を試したが、有望なものはまだ見い出せていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
L/M視物質遺伝子の解析に関しては、方法を既に確立していたこともあり、興味ある知見が次々と得られており順調である。2型色覚に関しても累計で500例を超えたので遺伝子解析結果を近々公表する予定である。しかし、L/M視物質遺伝子の発現調節に関しては、L型エキソン2の遺伝子発現に及ぼす影響以外の成果が得られていない状況であるため「やや遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
女性の色覚異常自体が稀であるが、正常遺伝子型の場合はさらに稀である。両L遺伝子の異常を明らかにし早急に論文として報告する。 L遺伝子のプロモーターの異常により色覚異常となる例は報告されていない(M遺伝子プロモーターに関してはわれわれのものがある)。解析を進め論文として報告する。 視物質を発現しているWERI細胞にゲノム編集を行って視物質の発現を解析する予定であるが、その基礎データが必要である。WERI細胞(女性由来)においてそれぞれのX染色体にどのように視物質遺伝子が並んでいるかをまず明らかにし報告する。 M遺伝子プロモーターの解析にゲルシフト法を用いているが、プローブDNAの標識に蛍光が使えるか検討する。これが確立できれば転写因子の同定が速く進むものと期待される。
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次年度の研究費の使用計画 |
旅費、人件費・謝金、その他が予定よりも少なかったため。 薬品などの消耗品に使用する予定である。
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