研究課題
杆体一色覚における変異の検索 - 新たに2例の杆体一色覚のゲノムDNAを解析し、CNGA3における新規なミスセンス変異と新規な2 bpの欠失変異を見出した。ミスセンス変異に関しては、当該変異を導入したcDNAを作成し、発現ベクターに繋いで培養細胞にトランスフェクションし、パッチクランプ法を用いて電気生理学的に検討した。cGMP感受性電流は記録できなかったが、低温培養によりチャネル機能がレスキューされたので、当該ミスセンス変異は細胞内トラフィッキングの障害を起こす変異と考えられた。杆体一色覚の責任遺伝子解析系の確立 - 杆体一色覚の責任遺伝子としては、上記CNGA3(錐体cGMP依存性カチオンチャネルα鎖の遺伝子)の他に、CNGB3(同β鎖の遺伝子)、GNAT2(錐体トランスデューシンα鎖の遺伝子)、PDE6C(錐体ホスホジエステラーゼのα鎖の遺伝子)とPDE6H(同γ鎖の遺伝子)が知られている。これらの5遺伝子をすべて解析する場合には計61エキソンをPCR増幅しなければならない。われわれは今回、ロングPCRを用いてエキソンをまとめて増幅する系を確立した。シーケンシングプライマーは当然エキソンの数だけ必要であるが、PCR自体は20点程度で済むようすることができた。ミスセンス変異の電気生理学的検討 - われわれはすでに、CNGA3のミスセンス変異を39種解析し報告していた(2007年)。その後新たに報告された変異についてもその都度解析してきたが、今年度は主に中国から報告された18種のミスセンス変異について検討した。cGMP依存性の膜電流が記録できるものが2種、低温培養でチャネル機能をレスキューできるものが3種存在することが分かった。
2: おおむね順調に進展している
当初の目的であったCNGA3の新たに報告された変異、または我々自身が見出した新たな変異を導入したチャネルに対して、パッチクランプ法により電流の有無と低温レスキューをおこない、膜への発現の有無を確認できた。また、杆体一色覚の原因といわれている他の遺伝子の解析の方法もロングPCRにより簡便に行える系を確立した。
(1)機能レスキューされた変異α鎖チャネルの解析 前年度に判明した、機能レスキューされる変異α鎖チャネルについて、β鎖とのヘテロ四量体の性質などを検討する。(2)変異α鎖の細胞膜での発現の検討 野生型β鎖の共発現で機能レスキューできなかった変異に関しては、野生型β鎖との会合の有無を、β鎖のC 末につけたFLAG タグを用いた免疫沈降と、α鎖のC 末につけたMyc タグを用いた検出の組み合わせで検討する。(3)キメラcDNA と、タンデムcDNA の作成 α鎖とβ鎖は基本的に同じ構造(N 細胞質領域-膜貫通領域1(S1)-ループ1-膜貫通領域2(S2)-ループ2-膜貫通領域3(S3)-ループ3-膜貫通領域4(S4)-ループ4-膜貫通領域5(S5)-ポア領域-膜貫通領域6(S6)-C-リンカー-サイクリックヌクレオチド結合領域-C 細胞質領域)であるのでキメラを作成するのは容易である。一方、タンデムcDNA の方は、すでにあるα鎖cDNA クローンのKpnI サイト(開始コドンの直上流)にα鎖やβ鎖のcDNA を挿入する、あるいは、β鎖cDNA クローンを作製し、そのKpnI サイト(開始コドンの直上流)にα鎖のcDNA を挿入するという形で作製する。(4)他の杆体一色覚の責任遺伝子解析 今回新たに確立した解析系を用いて、CNGB3(同β鎖の遺伝子)、GNAT2(錐体トランスデューシンα鎖の遺伝子)、PDE6C(錐体ホスホジエステラーゼのα鎖の遺伝子)、PDE6H(同γ鎖の遺伝子)の変異の有無を解析する。
人件費と謝金がかからなかった。大きな器械の購入がなかった。
薬品、試薬などの物品費に使用する予定である。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (6件) 図書 (3件)
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