研究課題/領域番号 |
25462713
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
赤木 忠道 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (30580112)
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研究分担者 |
後藤 謙元 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20632095)
池田 華子 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20372162)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 波長走査型光干渉断層計 / 篩状板解析 / 強度近視眼緑内障 / 遺伝子 |
研究概要 |
まず波長走査型光干渉断層計(SS-OCT)を用いて、73人73眼の緑内障眼の緑内障手術前と手術後の篩状板の位置、形状を比較検討した。その結果、眼圧は術前22.73±8.95mmHgから術後13.42±6.10に有意に低下(P<0.001)したのに伴い、篩状板の深さは術前580.6±152.5μmから術後548.4±148.0μmに有意に小さくなり(P<0.001)、前篩状板組織は332.3±180.8μmから390.5 ± 235.5μmに有意に肥厚し(P=0.01)、眼軸長は24.86±1.84mmから24.51±1.71mmに有意に長くなった(P<0.001)。多変量解析の結果、篩状板の深さ変化に有意に影響した因子は眼圧下降率(P=0.008, beta=-0.300)、術前の篩状板の深さ(P=0.032, beta=-0.244)、静的視野検査のMD値(P=0.035, beta=0.242)であった。つまり、眼圧下降率が大きいほど、元々の篩状板の位置が深いほど、視野障害が重症であるほど、緑内障手術による篩状板の前方移動は大きく生じるということが分かった。このことは、緑内障が重症であるほど低い目標眼圧設定が必要であるとする現状の治療方針をサポートする有用な情報と考えられた。 また、開放隅角緑内障眼、あるいは正常眼圧緑内障に強い関連を持つことが報告されているCDKN2B遺伝子の、強度近視眼における緑内障の有無との関連について検討した。対象は237人の強度近視を伴う緑内障患者と276人の強度近視を伴う非緑内障患者で、CDKN2B-AS1遺伝子多型(rs4977756)について2群間で比較した。予備研究の段階では有意な関連が示唆されていたが、症例数を増やし再検討した結果、年齢性別補正後の結果は有意な関連を認めない結果であった(P=0.49)。このことから、強度近視眼における緑内障の発症にはCDKN2B-AS1遺伝子の関与は少なく、他の因子の関与が大きいことが示唆される結果であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
緑内障手術前後での篩状板形状解析は、術後短期間の変化に関しては波長走査型光干渉断層計による解析はおよそ100眼に対して完了しており、術後3か月での変化に関してはすでに論文化した。術後長期の変化及び視野障害の進行との比較に関しては長期間の経過観察を要するため今後の課題である。 遺伝子解析に関しては、強度近視眼の緑内障発症に対するCDKN2B-AS1の関連に関してはすでに結果を得ている。手術を施行した緑内障眼のDNAサンプル採取は現在進行中であり、サンプル採取に関しては問題なく進行中である。DNA解析は今後随時進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後はDNA解析を進め、画像解析で得られた情報との相互関係について解析予定である。同時に緑内障手術前後での画像取得も継続する。術後長期経過症例に関しては術後の視野障害の進行程度について静的視野検査のトレンド解析によって評価を行う。緑内障手術前後での補償光学適用走査レーザー検眼鏡(AO-SLO)による篩状板孔の画像解析に関しては術後眼の画像取得が難しいことから予定通りには進んでいない。この点に関してはSS-OCTを用いても篩状板孔の解析はある程度可能であることから、SS-OCTを用いた画像解析を詳細に行うことにより十分対応可能であると考えている。
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