本研究の目的は糖尿病網膜症や糖尿病黄斑浮腫の病態にAngptl2が関与しているかを検討する事であったが、糖尿病網膜症や糖尿病黄斑浮腫の患者を手術する時に得られる硝子体サンプルを用いたELISA法や増殖膜のサンプルに対するAngptl2の免疫染色の実験結果より、Angptl2が糖尿病により引き起こされる網膜症だけではなく黄斑浮腫の病態にも関与している事が示唆された。増殖膜の免疫染色の結果からは主に浸潤マクロファージや血管内皮細胞に強い発現が認められたため、糖尿病黄斑浮腫の病態においても、マクロファージの関与が示唆された。 マウス網膜におけるAngptl2の発現の検討も行ったが、局在ははっきりしなかったが、ストレプトゾトシンを用いて誘発する糖尿病モデルマウスにおいてはAngptl2の発現は上昇していた。Angptl2ノックアウトマウスを用いた実験では、ストレプトゾトシンを用いて誘発する糖尿病モデルマウスの網膜においては、Angptl2ノックアウトマウスではICAM-1 (intercellular adhesion molecule-1)、IL-6、 MCP-1などの接着因子やサイトカインの発現が抑制されていた。コンカナバリンAを用いた白血球と血管内皮の接着を検討した実験ではAngptl2ノックアウトマウスにおいて白血球の接着は抑制されていた。 網膜血管内皮細胞株HREC(Human retinal endothelial cells)を用いた実験でもAngptl2が1%の低酸素状態にて発現が上昇する事やTNFαを添加する事によりAngptl2の発現が上昇する事が認められた。
|