研究課題
増殖性硝子体網膜症は裂孔原性網膜剥離術後の重篤な合併症であり、線維性細胞増殖が網膜上、網膜下および硝子体中に生じ形成された増殖膜の収縮で剥離網膜が牽引固定される病態である。病態形成の分子メカニズムは完全に解明されておらず現状では有効な薬物治療もない。増殖膜の主たる構成細胞は上皮間葉移行を起こした網膜色素上皮細胞であり、TGF-β2が病態形成に深く関与する。本研究では網膜色素上皮細胞においてTGF-β2で誘導され眼内増殖組織に特異的に発現する分子であるfibronectin ED-Aに着目し、眼内増殖性病変の新たな分子標的治療の確立に向けた実験を進めた。抗Fibronectin ED-A抗体は網膜色素上皮細胞においてTGF-β2で誘導されるI型コラーゲンの産生を著明に抑制した。上皮間葉移行の指標となるその他の細胞外マトリックスの再生に関してはDNAマイクロアレイとmiRNAアレイを使用して網羅的に解析中であるが早期の上皮間葉移行に関しては不明な点が多い。また、Fibronectin ED-Aの抑制に関しては、抗Fibronectin ED-A抗体だけでなくFibronectin ED-AのsiRNA、shRNAを使用してより効率的な抑制方法を検討中である。Fibronectin ED-Aの産生機構の制御に関しては各種のTGF-β2シグナル伝達関連因子を標的として検討を進めている。標的とする因子は、Smad、p38MAPK、PI3K、PKC-δでありどの因子もI型コラーゲンに代表される細胞外マトリックスの産生に深く関与している。各因子間のクロストークについてもさらなる検討が必要である。
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Ophthalmology
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