研究課題/領域番号 |
25462728
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
横井 則彦 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60191491)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 涙液油層 / マイボーム腺機能不全 / マイボーム腺脂質 / 界面化学 / レオロジー / ドライアイ / 国際情報交換 |
研究概要 |
眼表面を構成する涙液層は、最表面の油層とその直下の液層とからなり、油層は主にマイボーム腺の脂質に由来し、非極性脂質と極性脂質との2層で構成される。涙液油層は、早い瞬目運動に呼応して再現性よく伸展・収縮を繰り返し、涙液層の形成およびその安定性の維持、液層の水分の蒸発抑制に働き、眼表面の上皮細胞の乾燥保護、平滑な眼光学面の形成、ひいては視機能の維持に重要な役割を果たしている。平成25年度は、健常眼ならびにマイボーム腺機能不全の涙液層を含む眼表面の解析後、採取した脂質をソフィア大学生化学教室にて解析し、健常な脂質においては、そのレオロジー(粘弾性)特性において、弾性成分の割合が大きく、粘性の成分の割合が小さいこと、一方、マイボーム腺機能不全眼の脂質においては、その比率が逆転していることを見出し、このことが涙液油層動態ならびに涙液破壊に関係しているのではないかという仮説を打ち立てることができた。また、健常眼において、瞬目運動や眼球運動における涙液層の動態解析を行うと共に、各種のドライアイを対象として、涙液層の安定性解析法の比較検討や涙液破壊パターンの分類とその解析を行った。その結果、健常眼においては、水平方向の眼球運動に対して、油層と液層からなる涙液層が角膜表面と一体化しているという涙液層の『Fluid shell』仮説を打ち立てることができた。その一方で、下方視から正面視に戻る眼球運動においては、角膜下方の液層がしばしば急速な菲薄化を示すという新事実を発見した。さらに、涙液層の安定性解析法の比較では、フルオレセインによる評価法が最も感度が高く、トポグラフィーによる方法が低いこと、ならびに、涙液破壊の分類では、4つの涙液破壊が区別でき、それらが独立している可能性を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、健常眼とマイボーム腺機能不全眼との比較で、脂質分子の挙動を界面化学の手法でレオロジーの視点ならびに涙液油層の直接的な動態観察により解析することを第一の目標とし、それ以外に、健常眼およびドライアイでの涙液油層動態ならびに涙液破壊にかかわる検討を行った。その結果、ソフィア大学生化学教室の解析協力により、マイボーム腺機能不全の脂質の粘弾性特性の異常を明らかにできた。また、眼球運動時の涙液層の挙動についても興味深い事実を発見しそれについて詳細な解析を行うことができた。さらに、涙液層の最も重要な性質である涙液層の安定性に関して、その評価方法の比較検討、ならびにドライアイにおける涙液破壊パターンの分類について臨床的に役立つ情報を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の研究で明らかにされたマイボーム腺機能不全におけるマイボーム腺脂質のレオロジー上の特性が、in vivo でも表現されているか否か、健常眼と涙液油層動態を比較検討するとともに、その臨床的意義を明らかにする。また、新しく見出した眼球運動に伴う涙液層の動態解析から見出された涙液層の『Fluid shell』仮説についてのや検討を進め、その臨床的意義を明らかにし、ドライアイや流涙症についても『Fluid shell』の動態解析を進める。さらに、涙液層の安定性の評価法の検討では、トポグラフィーによる方法を定量化する方法を探索し、涙液破壊分類については、臨床的により役立つ形へと発展させる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、既存の検査機器を用いて健常眼およびドライアイに対して検査を行い、その解析を行ったため、使用した助成金は、予定より下回った。また、マイボーム腺脂質解析は、ソフィア大学の既存の計測機器を使用しているため、必要経費は、予定より少額であった。平成26年度は、平成25年度に得られた結果を用いて、統計解析、論文執筆、学会発表などを進めるため、必要経費は、予定より上回ると考えている。 論文作成、英文校正、統計解析、国内外での発表、ソフィア大学の共同研究者とのミーティングを予定している。
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