研究課題
角膜上の涙液層は、油層と液層からなり、液層には、結膜の杯細胞から分泌される分泌型ムチンが混じり混むことで、開瞼時に、ゲル層として振る舞う可能性がある。平成25年度の研究により、角膜上の涙液層の液層が油層をその表面に乗せたまま、水平方向の衝動性眼球運動(サッケード)に対して、一体(Fluid shellと命名)として振る舞うこと、ならびに、下方のサッケードに対しては、涙液層の破壊が引き起こされやすくなることを見出した。平成26年度は、液層の水分増加(水分の点眼で生じうる)における、油層および液層の振る舞いについて検討し、水分増加により、水平方向のサッケードでも、涙液層に流動性が生じ、ゲルとして振る舞わなくなることを見出した。また、サッケードが視機能に及ぼす影響をビデオトポグラファーで検討し、下方のサッケードにおいては、視機能への大きな影響が生じうることを明らかにした。一方、平成25年に、4つの涙液層の破壊パターンを見出し、平成26年度には、さらにもう一つの破壊パターン(dimple break)を見出して、ドライアイが5つの涙液層の破壊パターンを示しうること、および、それらの破壊パターンドライアイのサブタイプを構成することを明らかにした。そこで、これらの涙液層の破壊パターンが視機能に及ぼす影響を検討するために、平成27年度は、ビデオトポグラファーを用いた破壊パターンの定量解析に着手し、5つの破壊パターンを定量解析できるシステムを開発した。一方、涙液層の動態のin vitroでの検討では、平成27年度も引き続き、ソフィア大学のGeorgiev博士の協力を得ながら、界面化学の手法を用いた検討を行い、PVPを含むソフトコンタクトレンズでは、乾燥ストレス下で、その水濡れ性を保ちやすいことを明らかにした。
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