当教室にて作成したドライアイ動物実験マウスの涙腺を摘出し、経時的に涙液分泌量、瞬目回数、角膜上皮障害の有無を検討する予定であった。また摘出涙腺の炎症性サイトカイン、免疫染色などの検討を行う予定であった。この実験系は野生型、腎不全型マウスモデルでも検討する予定であった。この基礎研究結果をふまえて、臨床研究を行う予定であった。これまで糖尿病患者では涙液分泌量が低下しているという報告があり、ドライアイが重症化することが問題となるため、新たな治療法の検討を行う予定であった。患者から同意を得た上でマイボーム腺の状態、涙液量、角膜びらんの有無などを検討し、透析患者を非糖尿病と糖尿病患者に分けて検討する予定であった。基礎研究では発表を行えず、臨床研究においても、糖尿病患者への説明及び同意が遅れたため、マイボーム腺の状態、涙液量、角膜びらんの有無など、診察による臨床研究が遅れた。このため研究発表が行えなかった。 また、この研究期間にマウス角膜における新生血管の研究を行った。重症化した角膜炎症性疾患では炎症により角膜混濁が残存することがある。これは炎症による瘢痕、線維化により起こる。我々は温度感受性イオンチャンネルであるTRPV1(transient receptor potential protein vanilloid 1)に着目した。TRPV1欠失マウスは角膜中央部を熱凝固した際に起こる輪部からの新生血管の伸展を抑制した。real-time RT PCRでトランスフォーミング増殖因子1(TGFb1)のmRNAが低下しており、免疫組織学的検討ではTRPV1と血管内皮増殖因子の染色性が低下していた。このことからマウス角膜ではTRPV1欠失は新生血管の成長が抑制されると考られた。この研究はJournal of Opthalmology に投稿し医学博士を授与した。
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