研究課題
脈絡膜新生血管(CNV)による加齢黄斑変性(AMD)は先進国の中高年者失明の主因となっている。網膜色素上皮やマクロファージをターゲットとしたAMD発症機序が研究されているが、その全容は明らかではない。本研究ではアンギオポイエチン様タンパク-2 (ANGPTL2)に着目し、CNV発症におけるANGPTL2の関与とその病態機序について検討した。マウスレーザーCNVモデルでは、CNV病変部にANGPTL2局在を認め、脈絡膜・網膜色素上皮組織のリアルタイムPCR解析にてもANGPTL2のmRNA発現亢進が見られた。一方、ANGPTL2ノックアウトマウスでは野生型に比較してCNV容積が著明に低下しており、リアルアイムPCR解析にてMCP-1、IL-1β、IL-6、MMP-9、TGF-β1の発現低下が見られ、ANGPTL2のCNV形成への関与が示唆された。次に、CNV形成に関与するANGPTL2の由来を確認するために、骨髄移植モデルを用いたレーザーCNVモデルを解析、マクロファージと網膜組織双方のANGPTL2がマクロファージ集積とCNV形成に関与していることを明らかにした。マウスマクロファージ培養株RAW264.7およびマウス腹腔刺激誘導マクロファージを用いた解析では、ANGPTL2刺激による炎症性メディエーターおよびマクロファージ遊走能の亢進を認め、インテグリンα4およびインテグリンβ2を介し、転写因子NF-κBやERKのリン酸化を通じたシグナル伝達によることを明らかにした。本研究を通じ、組織内のANGPTL2がマクロファージ集積を誘導し、さらにマクロファージから分泌されるANGPTL2によって炎症シグナルが活性化し、CNV形成が促進するメカニズムを明らかにした。ANGPTLを介した炎症・血管新生シグナルの制御はAMD治療に対する新たなターゲットとなり得ると考えられた。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件)
Journal of Biological Chemistry
巻: 291 ページ: 7373,7385
10.1074/jbc.M115.710186