研究実績の概要 |
昨年に引き続き経角膜電気刺激の安全性と短期効果を電気生理学的手法を用いて他覚的に評価するための方法を検討した。昨年は有機ELモニターを刺激装置として用いた場合の問題点とその有用性を検討した。また、パターンERGと黄斑局所ERGにおけるPhNR成分を比較したところ、いずれも片眼性の網膜神経節細胞障害およびその軸索線維障害において他覚的機能評価方法として有用であると考えられた。 他方、経角膜網膜電気刺激を行う際の電極について、Brian-Allen型コンタクトレンズ電極(BA)と皮膚電極を用いた際のelectrically evoked response (EER)およびphospheneの閾値を検討した。皮膚電極の位置は上眼瞼―下眼瞼(上下)、上眼瞼―外眼角(上外)、下眼瞼―外眼角(下外)の3通りとした。電気刺激は、cathodicの陽性陰性が等しい20Hzのパルスとし、0,1,10,20,30,…150μAまで連続的に記録した。30ms付近の陰性成分N30と40ms付近の陽性成分P40の振幅と潜時を測定解析した。潜時は特に大きな差はなかったが、振幅は下外<BA<上外<上下、の順であった。またphospheneの閾値はこの順に100,20,50,50μA、上下の皮膚電極配置の場合に80μA以上で軽度の痛みを伴った。以上からはBAに比して皮膚電極での刺激効率は同等かそれ以上であり、位置は上下が好ましいと考えられた。また、BAでは軽度の角膜上皮障害が生じうるが皮膚電極では特に臨床上問題となる障害は認められなかった。 引き続き、安全で効率のよい刺激を行える電極について検討を行っていく予定である。
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