研究課題
網膜色素変性は、本邦における失明原因の上位に位置し、治療法の開発が急務でありながら、現在、決定的な治療方法が確立していない難病である。2008 年、RPE65 遺伝子変異をもつLeber 先天盲(網膜色素変性類縁疾患)に対し、網膜色素変性に対する遺伝子治療の可能性が有望視されるようになった。しかし、網膜色素変性の原因は多岐にわたり、原因となる遺伝子変異を特定することは困難である。本研究は、網膜色素変性とその類縁疾患に対し、候補遺伝子の分子遺伝学的アプローチにより、原因となる遺伝子変異を検出・特定し、表現型との関連性、ハプロタイプ、変異遺伝子の発現レベルについて明らかにすることを目的とした。平成26年度は、特に、網膜色素変性およびLeber 先天盲の原因を特定するために、約20家系の発端者およびその血縁者に対して、候補遺伝子に対するSanger法に加え、次世代シークエンサを用い解析した。その結果、常染色体優性遺伝性網膜色素変性でRHO遺伝子変異をもつ2家系、常染色体劣性遺伝性網膜色素変性でC8orf37遺伝子変異をもつ家系、Leber 先天盲の2家系でRPE65遺伝子変異をもつ家系を特定した。C8orf37遺伝子変異をもつ症例は重症度が高いことが判明した。また、RPE65遺伝子変異に対する遺伝子治療は欧米で現在行われていることからビタミンA代謝に重要なRPE65遺伝子に変異をもつ症例は、将来の遺伝子治療やビタミンA関連治療薬の対象になり得ると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
本研究は、網膜色素変性とその類縁疾患に対し、候補遺伝子の分子遺伝学的アプローチにより、原因となる遺伝子変異を検出・特定し、表現型との関連性、ハプロタイプ、変異遺伝子の発現レベルについて明らかにすることを目的としている。遺伝子変異の特定については、20家系異常でその原因を突き止め、また、ハプロタイプ解析では、幾つかの変異は、欧米と異なる可能性が示唆された。遺伝子型と表現型の関連性については、ロドプシン変異をもつ網膜色素変性は比較的軽症であるのに対して、C8orf37遺伝子変異をもつ症例は重症度が高かったことがわかった。このように幾つかの遺伝子変異の特徴を理解するに至っている。
今後は、さらに網膜色素変性およびその類縁疾患における多数家系で、遺伝子解析を行い、遺伝子変異を検出・特定し、表現型との関連性、ハプロタイプ解析を進めていきたい。
比較的順調に研究が遂行されているが、解析する症例数が予想をやや下回っていたためと考えられる。
次年度は、さらに積極的に解析する症例を集め、引き続き研究を継続していく予定である。
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Ophthalmic Genet
巻: in press ページ: in press
in press
Doc Ophthalmol
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