研究課題
申請者らは細胞外マトリックスタンパク質LTBP-2の生物学的機能を解析する目的で、遺伝子欠損マウスを作成しその表現型を解析した。LTBP-2の遺伝子変異はヒトで先天性緑内障や水晶体脱臼との関連が報告されていることから、作成したLTBP-2欠損マウスで同様の表現型が見られるか調べたところ、変異マウスでは水晶体を保持する毛様小帯が形成不全となっており、水晶体脱臼の表現型が確認された。一方で緑内障の指標となる眼圧の上昇や網膜神経節細胞の脱落などは確認されなかったことから、LTBP-2の欠損により生じる一次的な疾病は毛様小帯形成不全による水晶体の脆弱化及び脱臼であり、緑内障は二次的に起こる現象であろうと結論された。ヒトのLTBP-2遺伝子変異による緑内障発症について、その後の研究で家族性緑内障の患者でLTBP-2遺伝子の変異が検出されないことからLTBP-2変異が直接緑内障を引き起こすのか、それとも他の疾病により二次的に緑内障が生じるのかという点について議論されていたが、申請者らの研究結果は後者の説を強く支持するものとなった。これらの研究結果はHum. Mol. Genet.に掲載された。マウスでの緑内障研究にはマウスの系統が強く影響することが知られており、DBA/2J系統のマウスが緑内障を発症する傾向にありよく研究に用いられている。そこで申請者らが作成したC57BL/6J系統のLTBP-2遺伝子変異をDBA/2J系統に移行させ、DBA/2J系統でのLTBP-2変異マウスを作成しその表現型を緑内障について調べたところ、DBA/2J系統では変異マウスは野生型に対して有意に眼圧が上昇しており、緑内障の兆候が見られた。現在網膜神経節細胞の脱落など、他の緑内障の症状について解析を進めている。
3: やや遅れている
DBA/2J系統のLtbp-2欠損マウスの作成のための交配に時間がかかったため。
作成されたDBA/2J系統のLTBP-2変異マウスについて緑内障関連の表現系の解析を進める。またヒトで発見されたLTBP-2変異蛋白質の機能の有無を培養細胞系で調べることでLTBP-2の機能に必須であるアミノ酸領域の同定を行う。さらには類縁のタンパク質であるLTBP-4との機能的な相違を調べる目的でLTBP-2/LTBP-4二重欠損マウスの作成及びLTBP-4を過剰発現させたLTBP-2欠損マウスの作成を行ってその表現型を解析する。
購入予定の物品を変更したため未執行額が生じた。
実験試薬や研究成果発表のための旅費に使用する予定である。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件)
Human Molecular Genetics
巻: 23 ページ: 5672-5682
10.1093/hmg/ddu283