研究課題
家族性滲出性硝子体網膜症は遺伝的多様性が高い疾患である。既知の原因遺伝子として4種類の遺伝子があり、症例全体の50%を占めると考えられている。これらの遺伝子がコードする蛋白はWNTシグナルのリガンド―受容体の複合体を形成する。この複合体はWNTシグナルを介して網膜血管形成を制御する遺伝子の転写を促進する。遺伝子の異常は転写活性を低下させるが、家族性滲出性硝子体網膜症にみられる変異の多くはミスセンス置換であり、転写活性の低下度はさまざまである。また、遺伝子異常を機能的に中立なミスセンス置換と区別することは困難である。このため家族性滲出性硝子体網膜症の遺伝子診断では検出された変異を臨床像に対比して評価することが困難である。本研究の目的は家族性滲出性硝子体網膜症の原因となる遺伝子の機能異常とその臨床像の相関を明らかにすることである。これにより適切な遺伝カウンセリングが可能となり、治療方法の開発へ寄与することができる。本研究では家族性滲出性硝子体網膜症について、(1)日本人にみられた遺伝子異常をカタログ化する、(2)各変異による転写活性の低下度をレポーターアッセイによって評価し、遺伝子型と臨床像の相関を網羅的に解析する、(3)新規の原因遺伝子を同定することにより、家族性滲出性硝子体網膜症の原因の全体像を解明する、ことを推進する。今年度の実績の概要としては、(1)新たに6家系に遺伝子変異と思われるDNA変化を同定した。(2)4種類の遺伝子のうち3種類を標的として、レポーターアッセイに必要な遺伝子cDNAを導入した発現ベクターを確保した。(3)新規の原因遺伝子としてZNF408遺伝子を同定し、その日本人における遺伝子頻度を調査した。家族性滲出性硝子体網膜症の関連疾患である先天性網膜剥離の原因遺伝子であるATOH7の関与を検討した。
3: やや遅れている
(1)日本人にみられた遺伝子異常をカタログ化する、(2)各変異による転写活性の低下度をレポーターアッセイのよって評価し、遺伝子型と臨床像の相関を網羅的に解析する、(3)新規の原因遺伝子を同定することにより、家族性滲出性硝子体網膜症の原因の全体像を解明する、のうち(1)、(3)は計画通り進行した。(2)は今年度中に発現ベクターの配列確認と変異導入を計画したが、プラスミド抽出や配列確認(シークエンス)の条件設定に時間を要した。
(1)日本人にみられた遺伝子異常をカタログ化する、(2)各変異による転写活性の低下度をレポーターアッセイのよって評価し、遺伝子型と臨床像の相関を網羅的に解析する、(3)新規の原因遺伝子を同定することにより、家族性滲出性硝子体網膜症の原因の全体像を解明する、のうち(1)は計画通り推進する。 (2)は3遺伝子によるレポーターアッセイまで推進する。(3)については柔軟に対応する。
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Proc Natl Acad Sci U S A
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10.1073/pnas.1220864110
Br J Ophthalmol
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