研究課題/領域番号 |
25462751
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
忍足 俊幸 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (40546769)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 神経血管単位 / 糖尿病網膜症 / 神経保護 / 神経突起再生 / neurotrophin-4 / TUDCA / 網膜3次元培養 / 終末糖化産物 |
研究実績の概要 |
糖尿病網膜症の初期病変には血管病変と神経病変がある。神経病変は不可逆的変化で水面下で蓄積するため視機能の障害に直結する変化である。糖尿病ストレスによる神経病変の発症・進行を抑制するためには、そのメカニズム解明は必須である。また糖尿病ストレス下における神経保護・再生促進を促す種々の薬剤の候補を網膜3次元培養を用いて解析した。糖尿病ストレスとして培養液に終末糖化産物(AGEs)を負荷した上で、種々の栄養因子であるNT-4、GDNF、HGF、TUDCAの神経保護・再生促進作用を検討した。すべての栄養因子は再生促進作用を示したが、NT-4が最も神経保護・再生促進作用が強かった。AGEsを負荷すると細胞死関連キナーゼであるp-JNK、p38の活性が上がり、転写因子であるSP1、NF-kBの発現が上昇することが確認されたが、種々の栄養因子はp-JNK、p38、NF-KBの発現を抑制し、SP1持続発現を促した。NF-kBは周皮細胞死にも関与していることが示唆されており、これらの薬剤の中には血管病変の進行も同時に抑制する可能性があることが推察された。今後神経保護のみならず、神経・血管・グリアによる神経血管単位での構造・機能保護目的に向けて治療戦略の幅が広がる可能性が示唆された。現在in vivoにおける動物実験遂行に向けて準備中であり、近い将来の新たな神経血管単位保護治療戦略の確立及び治療戦略特許申請に向けて実験のステップアップをしていくところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高濃度AGE-BSA負荷モデルにおいて、種々の栄養因子であるNT-4, TUDCA, HGF, GDNFの神経保護・再生促進作用を同時に比較し、なおかつ細胞死関連キナーゼや転写因子群の発現・活性の影響を確認することができた。中には血管病変の進行過程で見られるメカニズムと共通のメカニズムも確認されており、神経血管単位を包括的に保護する治療へと発展させる足がかりができている。今後、臨床応用へ向けてより具体的な治療戦略を立てるため、in vivoにおける神経保護・再生促進作用の検討に入る準備が整ったところである。
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今後の研究の推進方策 |
in vivoにおける実験遂行に当たって、モデル動物の検討を行っていくが、網膜症の進行が重症化しやすいSDTラットをモデル動物に使用する予定である。また、薬剤に関しても硝子体投与だけではなく、点眼において効果が確認できるよう工夫をこらしていく。そのための予備実験としていくつかの薬剤の相乗効果の検討やSDTラットにおける神経病変の進行の程度を定量的に検討する。その上で、種々の薬剤の実臨床に近い治療方法での保護作用の検討を行っていく予定である。ここから先は実践的な臨床応用を意識した上での検討に入っていく。
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