研究課題/領域番号 |
25462752
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
高瀬 博 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 講師 (20451940)
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研究分担者 |
望月 學 東京医科歯科大学, 医学部, 非常勤講師 (10010464)
清水 則夫 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 准教授 (30226245)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 水痘帯状疱疹ウイルス / 急性網膜壊死 / ヘルペス性虹彩炎 / 遺伝子型 / PCR |
研究概要 |
平成25年度は、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)による虹彩炎および急性網膜壊死患者眼内液の収集と、遺伝子の抽出を行った。 1. VZV虹彩炎および急性網膜壊死患者の眼内液検体の収集:学内倫理審査委員会の承認を得て、対象となる患者からのインフォームドを得た上で、VZVによるぶどう膜炎(虹彩炎または急性網膜壊死)が疑われる患者の眼内液を採取、収集した。この際、VZV虹彩炎患者からは前房水を検査目的で採取したものを用いた。急性網膜壊死患者では治療目的に硝子体手術を施行する際に採取される硝子体液を回収し用いた。 2. 眼内液検体からの遺伝子抽出と、VZV遺伝子の検出:収集された眼内液検体に対して、キットを用いて遺伝子の抽出を行った。診断目的でMultiplex PCR法およびReal-time PCR法を用いた各種病原微生物の遺伝子検査を行い、このうちVZV遺伝子が陽性に検出された眼内液検体を以後の研究に用いた。 3. VZVのオープンリーディングフレーム遺伝子領域の増幅:眼内液検体から得られたVZV遺伝子におけるオープンリーティングフレーム (ORF)のうち、ORF21, ORF22, ORF50の各領域を、特異的プライマーを用いてPCR法により増幅を試みた。ORF22, ORF50については良好な増幅産物が得られたが、ORF21については、十分な増幅産物を得られていない。そのため現在、異なる特異的プライマーを複数作成し、それぞれのプライマーにおいて十分な増幅産物を得られる条件を模索している。今後、増幅されたPCR産物は、アガロースゲルから切り出しを行い、キットを用いて精製し凍結保存する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現時点では、VZV虹彩炎および急性網膜壊死患者の眼内液検体の収集は順調に進行し、今後も新規患者からの検体が収集される見通しである。また、それぞれの患者眼内液検体からの遺伝子抽出、およびVZV遺伝子の検出もなされている。これらのVZV遺伝子の遺伝子型の分類を行う上で、それぞれの検体に含まれるVZVのオープンリーディングフレーム (ORF) 遺伝子領域の増幅し、その遺伝子配列を同定する必要がある。そのために、ORF21, ORF22, ORF50の遺伝子領域をPCRにて増幅、精製する必要がある。これまでに、ORF22, ORF50についてはPCRにより十分量の増幅産物を得る事が出来ている。しかし一方で、ORF21については、十分な増幅産物を得られていない。その理由として、これまでに設計、使用したORF21に特異的なプライマーが十分な反応を示す最適条件を同定できていない可能性、またプライマーの設計そのものに問題があった可能性などが考えられる。これに対して、現在はORF21を増幅できると考えられる複数のプライマーを設計・準備し、それぞれにおける最適な反応条件を調べる実験を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)虹彩炎または急性網膜壊死の患者眼内から得られたVZVの遺伝子型の解析を目的としている。そのため、それぞれの検体におけるVZVのオープンリーディングフレーム (ORF) 21, ORF22, ORF50の増幅が完了し次第、以下の研究を推進する。 1. VZVのORF遺伝子の一塩基多型 (SNP) 解析(高瀬、清水、鴨居) それぞれの眼内液検体から抽出したVZV遺伝子から増幅、精製した3つのORFの遺伝子配列を、遺伝子解析装置を用いて調べる。得られた遺伝子配列における一塩基多型 (SNP) を、専用ソフトウエアを用いて解析する。これにより、VZV虹彩炎と急性網膜壊死の眼内から得られたVZVの遺伝子型を、既知の系統株 (Clade 1-5, VI, VII)に分類する。 2. VZVの遺伝子変異の解析(高瀬、清水、鴨居) 眼局所検体におけるVZV系統株の分類に加えて、研究の進捗状況に応じて、いくつかの遺伝子変異株の存在をさらに検索する。第一の候補として、グライコプロテインE (gE) をコードするORF68における遺伝子変異を調べる。すなわち、これまでと同様の手法でORF68をPCRで増幅、精製し、遺伝子解析装置でその配列を調べる。その結果をこれまでに明らかにしている系統株の遺伝子配列データベースと照合し、遺伝子変異の有無を検索する。可能であれば、さらに他の遺伝子領域(gB, Thymidine kinaseなど)についても、同様の検索を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度内に予定していた、PCRによる水痘帯状疱疹ウイルス (VZV) におけるオープンリーディングフレーム (ORF) 21, ORF22, ORF50の遺伝子領域の増幅条件を全て揃える事ができなかったため、全ての検体における遺伝子増幅、抽出作業の行程に進む事が出来なかった。そのため、PCR試薬、遺伝子抽出・精製キットなどの必要購入量が予定よりも少なくなり、次年度への持ち越しとなった。 全てのオープンリーティングフレームの遺伝子増幅条件が整い次第、現有の全ての患者検体から遺伝子増幅、精製を行う。そのためのPCR試薬、遺伝子抽出・精製キットの購入に使用する予定である。
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