成熟期ほ乳類の視神経は損傷後も再生が極めて難しい。しかし、新生期では比較的容易に再生できることが分かってきた。これらの神経再生機構の相違を精査することは、成熟ほ乳類中枢神経再生機構解明の鍵となる。ヒストンの化学的修飾やそれによるクロマチンリモデリングは再生関連分子の遺伝子発現ON/OFF機構とその後の神経再生の可否決定機構の根幹を司る可能性がある。本研究目的は、再生程度が異なる新生期と成熟期、および成熟期の視神経損傷前後のヒストンのアセチル化修飾やクロマチンリモデリングパターンを調べ、神経再生が起こる条件とそのターゲット分子の探索を行う。最終的に視神経損傷後のヒストンを再生が容易な状態に強制的に修飾させ、より効率的な成熟期ほ乳類の神経再生を目指す。また、その時に発現増加する分子を同定し、補充戦略によりさらに高効率の再生を誘導させたい。本研究は、新生期では成熟期に比べ視神経の再生能力が極めて高いことに着目し、新生期の再生メカニズムを精査し、成熟期ほ乳類に応用することで効率良い再生誘導機構を探索することを目的としている。再生に必要な網膜神経節細胞のヒストンの化学的修飾パターンの精査やその標的分子探索と、網膜神経節細胞の生存および軸索伸長との関連付けを含んだ機構解明は神経発生・再生のメカニズム解明の手がかりのみならず疾病治療のターゲットの探索を行う。
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