研究課題
【目的】近年サイトメガロウイルス(CMV)角膜内皮炎の報告が多数なされている。しかし、CMVの増殖はきわめて緩慢であり、CMVが実際に角膜内皮に感染できるのかについては十分な証拠がない。今回我々はin vitroでCMVが角膜内皮に感染できるのか、もし感染できるならどのような炎症応答を惹起するのかをマイクロアレイにて検討した。【方法】CMV Towne株、AD169株、臨床分離株を精製後、不死化ヒト角膜内皮細胞(hCEn)に吸着させ、hCEnへの感染性を検討した。CMVは、MOI0, 0.01, 0.1で吸着させ、6 、12 、24 時間後に上清、mRNA, DNAを抽出し、ELISA、プロテインアレイ、およびreal time-PCRを用いて、CMV遺伝子の転写、hCEnの炎症性サイトカイン応答プロファイルを検討した。【結果】Towne株、AD169株ではhCEnに感染が成立しなかったが、臨床分離株はhCEnへの吸着後、代表的CMV遺伝子IE-1、UL-83、Glycoprotein Bの、経時的転写誘導を認めた。吸着後のhCEnにおいては、IL-6, IDO1 (indoleamine 2,3-dioxygenase 1)を含め多数の炎症性あるいは制御性因子の転写が誘導された。プロテインアレイにおいては、BDNF、BLC、GDNF、PIGF、MCP-1、EGF、TGF-β1、PDGF-BB、IL-16、Leptin、MCSF、MCP-4、IP-10、IL-6、IL-13、IL-5、IL-15、GCP-2、FGF-9、IFN-γ、RANTES、Ckβ8-1、Eotaxin、MIP-3α、VEGFなどのサイトカインの誘導を認めた。【結論】CMVはhCEnに感染可能であり、角膜内皮に特徴的な感染免疫応答を誘導する。
3: やや遅れている
サイトメガロウイルスの角膜内皮細胞に対する感染力が弱く、1クールの実験をおこなうのに時間がかかる。また、十分な力価のサイトメガロウイルス精製株が大量にないとうまく感染が成立しない。
サイトメガロウイルスの角膜内皮感染においては、細かい分子のメカニズムを検討することに時間を要する、あるいはうまく施行できないことも考えられる。サイトメガロウイルスと同様の分子が単純ヘルペスウイルス感染で上昇することがわかっているので、単純ヘルペスウイルスを用いて、そういう分子(IDO1など)について検索することも検討する。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 2件)
Br J Ophthalmol
巻: 97 ページ: 498-503
10.1136/bjophthalmol-2012-302062
巻: 97 ページ: 1108-1112
10.1136/bjophthalmol-2012-302254
Jpn J Ophthalmol
巻: 57 ページ: 497-502
10.1007/s10384-013-0268-2
あたらしい眼科
巻: 30 ページ: 699-702
臨床眼科
巻: 67 ページ: 1143-1147